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戦争における「人殺し」の心理学  

前作、「戦争における「人殺し」の心理学 」に続き、戦闘に身を置く者のための具体的な対処法を語る本。
前作が、より学究的な立ち位置だったのに比べて、いかにして殺人のトラウマを軽減するかに重きが置かれている。


内容は、

・殺人は大きなストレスがかかる。

・交感神経と副交感神経、 殺人時には交感神経が圧倒的に優位になる。
  戦闘直後に副交感神経が極めて優位になるため、深く眠ってしまいそこを攻められると敗れることが多い。

・白、黄、赤、灰、黒の状態
 交感神経の高ぶりを心拍数で分類すると能力が発揮できるゾーンが分かる。

 黄のゾーンが一番良い。
 呼吸法で、望ましいゾーンを拡大できる。
 腹式呼吸で、息を吸い込んで、四秒。 吐いてそのまま四秒。を繰り返すことで、灰や黒のゾーンから黄色に戻れる。

 赤の状態では、脱糞、失禁、選択的聴覚抑制やトンネル視野などのストレス反応が起きる。
 そういう反応が起きることを知っていれば、ショックを抑制できる。

 また黄や赤の状態で、時間の延長などの感覚を味わうことがある。弾丸を目視することができ、避けることができる。

 また、頭や心臓をうちぬかれても数秒間は生存しており、行動もとれるため、そのまま敵を撃つことで敵を倒し危険を回避することができる。生き延びれば治療を受けて、蘇生する可能性があるので。

・殺人後のストレスによるPTSDには複数の要因が関わっているが、原因は中脳(子犬の脳)にあると考えられる。
 腹式呼吸による心拍数のコントロールと、言葉にすることで気持ちを整理することが望ましい。

・四つのF
 中脳の機能(子犬の脳)は、「fight(闘争)、flight(逃避)、feeding(摂食)、f***(生殖)」とみなせる。

・ストレスの解消
 激しい運動が最も望ましい。ウェイトトレーニング、ランニング、バスケットボール、はストレスホルモンを燃焼させる。
 食べることは一時的には、忘れることに繋がるが、忘れるだけなので元々の不安は食べ終わると戻ってしまう。

 コーヒーはあまり良くない。

・帰還兵にかける言葉の重要性
 「無事に戻ってきてくれてうれしい」という存在を認める言葉が大切。
 「戦争はどうだったか、どんなことがあったか」とたずねること。追及や詮索ではなく。

 「肯定」が大切だという。「あなたたちは正しいことをした、してくれと国が頼んだことを果たしてくれた、私たちの誇りだ」という言葉。

 第三は、「支援」である。できるだけよい「仕事」につけるように手助けをすること。仕事を支援できない場合は、自分の時間を割くこと、ただ握手をして「ありがとう」という気持ちを伝えること。

・とても良い言葉
 「無事でよかった」と「最悪の峠は越えた」という言葉。
 「あなたが無事でとてもうれしい」という言葉をかけることがとても大切。
 「心配したよ、無事でよかった」という言葉。

 そして、もう一つは、「最悪の峠は越えた。恐ろしい時期は過ぎた」ということを伝えること。

 これが、大丈夫だという嘘よりも、真実として、心を支える。


・まとめると

 1)高いストレスは心身に変化をもたらす。知覚が変化することがある。
 2)呼吸を通じてストレスをコントロールすることができる。
 3)生き延びた後に、身体のストレスは運動で解消することが望ましい。
 4)社会的な解消としては、体験を語り合うことが大切。
  また、行為を「肯定する文脈」を用意することが大切。
 5)無事でいること、存在そのものを肯定することが大切。
  また、最悪の時期は過ぎたこと、を伝えることが大切。

 殺人のような高いストレスを受けたときは、呼吸により中脳をコントロールしてストレスを抑制できる。
 また、自分自身の存在を肯定する言葉を受け取ることで、落ち着きを取り戻すことができる。
 また、行為そのものを、社会的に是認されることで、誇りを取り戻すことができる。


 こう考えると、日本人の誇りを取り戻そう・・・、という欲望の源泉が確認できる。あまり理解はできないが、対話のためのとっかかりにはなるかもれしない・・・。
 問題は、それを世界の文脈と齟齬をきたさないように接続するストーリーの一貫性になる・・・。