Jトラスト 決算の中身よりも為替差損が前年▲12億円→本年度▲73億円あるから面白いよね

Jトラストの第一四半期決算でたぞー!

暑いからテンション高目だぞー!

興味深いのは、為替差損が去年の同じ時期は▲12億円だったのが、今では▲73億円あることだぜ。というのがどういうことかというと、デフレ気味の日本に比べたらインフレ気味の諸国に金を貸すというのがどういうバランスシートへの影響を及ぼすのかという実例として興味深すぎるのだ。

http://www.jt-corp.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/20160812tan.pdf

とても面白い。

日本がデフレ基調から抜け出さないと外国通貨投資はキツいものがある。

 

マニフェスト・ディスティニーという考え方がアメリカを支えているらしい

アメリカ映画でよく、世界の趨勢を決するヒーローが出てくるけどこれって何なんだろう・・・という謎があったけど、マニフェスト・ディティニーに基づくものだったんだね・・・。セオドア・ルーズベルトがラフ・ライダーズを率いてキューバのスペイン軍と戦うのも、後のアメリカ的ヒーローの原型になっている気がする。特に、ヒーローになる前に、娘の出産によって妻を失い、同日に母も亡くした衝撃で農場を買って引きこもったりするところが、ドラマのあるべき姿を決めた感がある。

マニフェスト・ディスティニーに勝つために日本は石原莞爾の世界最終戦論を生み出したけど、やっぱり完全に同じ神授論的地平だと、存在しない神と、実在する人間が神だった場合、存在しない方が何となく強かったのかもしれない。

神(摂理)がアメリカ合衆国に、北アメリカ大陸全体で共和制民主主義(偉大な自由の実験)を広げる使命を与えたと考えた。明白な使命は道徳的な考え(高い法)であり、国際法や調停を含めその他の考慮事項を超越すべきと信じた。

ジョン・オサリヴァン - Wikipedia

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/12/American_progress.JPG/800px-American_progress.JPG

1872年に描かれた「アメリカの進歩」。女神の右手には書物と電信線が抱えられており、合衆国が西部を「文明化」という名の下に征服しようとする様子を象徴している。背後には1869年に開通した大陸横断鉄道も見える。

文明は、古代ギリシア・ローマからイギリスへ移動し、そして大西洋を渡ってアメリカ大陸へと移り、さらに西に向かいアジア大陸へと地球を一周する」という、いわゆる「文明の西漸説」に基づいたアメリカ的文明観

マニフェスト・デスティニー - Wikipedia

 

ハイパーインフレになるのかどうか

このところ、気に病んでいるのは日本がハイパーインフレになるかどうかなのだけど、A)少なくとも普通のインフレにならないと、いきなりハイパーなインフレに進むことはない。

しかも、B)インフレになった後に、紙幣の印刷を頑なに大量に続けるということが起きないとハイパーインフレにならない。

この二つの条件により、すぐにハイパーインフレが来るということはないかもしれない。さらに、C)日本の貯蓄率はマイナスで市中に出回った貨幣は、消費に回ってしまう。そこで企業も投資をしていると貨幣が過剰に流通するけど、内部留保の形でどんどん貨幣が回収される。

結果として、消費者の手元には貨幣が残らない。デフレ傾向が続いて企業は純資産の価値がどんどん増加する。決定的に労働力が逼迫するまでは、この傾向は変わらない。

いよいよ、労働力が逼迫し始めると、賃金を上げるか移民を増やすかで選択を迫られるけど、賃金を上げることを選ぶとインフレの道がゆっくりとスタートする。移民を増やすことを選ぶと、デフレ傾向は変わらないので、消費者の困窮はかなり激しくなる。

国債の信頼が失われるか?については、デフレ傾向であれば企業の実質購買力の向上が帳消しにするから国富としてはバランスが取れていて信頼が問われない。それで問題は起きないのだけど、どこかで、現金資産を海外に流出させる流れが起きると、インフレの懸念が高まる。インフレが進むと、債権の価値が消滅していくと同時に企業が現金を処分し始めるので、ハイパーなインフレの影が近付いてくるけど、その前に中央銀行が超高利回りを繰り出してインフレを叩き潰して大量失業が発生するので、ハイパーには至らない。

 

 だからハイパーインフレを前提として資産を構成するのはあんまり意味がなくて、どちらかというとデフレ傾向で、そのうちにインフレが不可避になるのだけど、かなり弱いという状態が続きそうかも。

 

35歳からの「脱・頑張り」仕事術 仕組みを作れば、チームは自動で回り出す

最後のページにまとめが載っています。かなり役立つ本なのでお奨め。

単なるビジネス本とは全然違う・・・。著者がマネジメントが全然できなかった過去を赤裸々に明かしているので、すごい勉強になる内容になってます。

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「仕組み」仕事術:40の指針

仕組みを作るための10の「思考術」「習慣術」

[1] 仕事の成否は初速で決まる

  •  とにかくまずは「仮説思考」
  •  論理(ロジック)なんて忘れて絵を描け
  •  マネージャーは、始めは「一兵卒」の如く
  •  頭より体、足で稼げ。耳で、目で、肌で稼げ

[2] チーム全員で仮説を磨き上げていく

  •  仮説を進化させるブレイン・ジャック創造思考
  •  ベン図法で部下との「共通領域」を探す(思考の円を広げて、相手との重なり合う点を探す。相手の円も広げていく。そして間に全く新しい結論を見つけていく。)

[3] 部下と併走しながら、仕事を仕上げていく

  •  バッタ型から芋虫、ムカデ型時間術へ
  •  「壁塗り」の原則(下地から粗い状態で何度も塗っていく、資料をきちんと作りこむのは最後)
  •  「島田タイム」のススム(週に半日は、仕事の仕上がりについて思いを巡らす時間が必要、紙に書いたり資料を作ったりしない。)
  •  その場主義、拙速は「正解」(会議で結論を出す。後から結論出さない。)

仕組みを作るための「人の動かし方」「伝え方」9の部品

[1] 部下の自立心に火を付ける、オーナーシップ移管術

  •  カミング・アウト人心掌握術(答えが分からない宣言)
  •  知らしむべし。由らしむべからず作戦。
  •  わからないふりミーティング術(答えを机の下に隠しておく)
  •  偽装「まとめ屋」成り切り作戦
  •  「棚上げ宣言」術(会議の発言は評価対象外と棚上げ、それを守らないと信頼失う)
  •  五階級特進作戦(今、会社の役員だったらどう判断するか。ポジティブな視点で考えること。)
  •  「無理です」「できない」は美味しい言葉(無理ならば、競合ができないことである可能性が高い。実現方法を考えれば協力な障壁になる。)
  •  「小学生でもわかる日本語」宣言(よくわからない横文字で議論が停滞するのを防ぐ。)
  •  二重人格のススメ(みんなの前では超楽観主義、ひとりでいるときは超悲観主義)

[2] 自立した部下の安全を守るリスク・マネジメント術

  •  「80点はとれる」宣言(だから、より高い品質を目指そう)
  •  「必ず勝て」応援法(でも負けても責任はマネージャーが必ずとる)
  •  「ER」(ERは「なぜ失敗した」とは言わない。まずトラブル解決が最優先。)
  •  「トラブル、謝罪担当」宣言
  •  窓際時間管理術(9:00-17:00を基本にして、それ以外を異常事態として管理)

[3] 明るく、前向きに向上心を煽る部下育成術

  •  相対的強みで勝負させろ(誰でも、どこかに相対的な強みがある、そこを伸ばす。だけど専門バカになるので、弱いところも伸ばしていく必要がある。一度に一つずつ。)
  •  ドタキャン作戦(一人で客先に送りたいけど、直前までは帯同する予定にして準備を一緒にやって、予定が入ってドタキャン状態で送り出す。)
  •  「実録 仁義なき戦い」(できる人はうまく力を抜くので、そこであえてマネージャーが仕事を競合するように進めることで、本気の戦いに明るく持ち込む。)
  •  領土割譲作戦
  •  ネアカ評価(悪い評価をみんなの前でしない。改善方法を伝える、成長のための評価であって、評価のためにはしない。)

仕組みを作り、動かす「マインド」を生み出す11の行動原則

[1] 部下が本当の仲間になった瞬間

  •  「仕組み」を回すことで部下が仲間に思えてくる
  •  「部下の自分史」語らせ作戦
  •  「三つの目標」宣言(組織、チーム、マネージャー個人の目標を宣言。個人の目標はあとで良い)
  •  「部下のプライド」警備員(プライドに配慮した上司の言葉は頭に残る)
  •  「褒め活かし」作戦(良いところを探す努力が大切)
  •   「勲章なんてあげっちまえ」宣言

[2] 前に進もうとする人に、人はついてくる

  •  「真っすぐ走る」部下は全部見ている
  •  永遠の成長を目指し勉強せよ!
  •  毎日、笑顔で部下に接する
  •  疲れたら、ゆっくり歩け!
  •  案ずるより産むが易し。まず動け!

最近の政治の論点の意味がわからない リベラルは労働者の所得向上を主張すればいいんじゃないのか

 左翼とかリベラル勢力とか護憲勢力とか、ともかく与党じゃない勢力全体が退潮していることが嘆かれているけど、リベラルが主張するべきことを忘れているから当然退潮しているだけだ。論点がおかしいから人気が出ないだけだ。マトモな論点で主張してリベラルは、力を取り戻さなければいけない。

 リベラルっぽい界隈が主張しなければいけないのは、労働者の所得をはっきりと明らかに目に見えて上昇させることだ。でも、そういうことを言う勢力はない。たとえば、鳥越俊太郎の政策を見てみよう。彼が主張するのは、こんなことだ。

働く人の37.5%が非正規社員。正社員化を促進する企業を支援します。

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shuntorigoe.com

 全く違う。正社員化を目指すのは悪くないと思うけど、もし正社員化率が100%で、今よりも賃金の総支払額が25%下がっていたらどうですか? 平等に賃金が下がったら、リベラルが忌み嫌う大企業の思うがままじゃないですか。

 かつて、ローズベルトがアメリカで実施したニューディールは、本質的に「労働者と消費者の交渉力を上げる」ことが目的だった。だから、低下していた労働組合の組織化率を国が支援して上げたし、賃金を上げることで低下している総需要を上昇させようとしていた。景気の低迷の要因を、明確に「総需要の低下」と見定めていたから、まずは労働者と消費者がお金を持って消費ができるようにしようとしたのだ。

 この理屈が今の日本のリベラルには完全に欠けている。生活の細部はどうでも良いのだ。正社員化率とか、残業が多いからブラックだとか、大企業にすりよっているとか、そういうことではない。「賃金を年々4~5%上げて、十年で1.5倍の賃金に上げていきます。そのために、保育と介護の賃金水準を劇的に上昇させて、それによって他産業の求人を吸収して、有効求人倍率を引き上げ、全体の賃金水準を自然と上昇させます」、というような、パンチのある政策を主張しないとダメだ。そもそも大企業も、このままいけば、順調に消費者の没落を招いて破滅的な収益低下に直面することになる。

 これをしないで、安部政権に対抗できるわけがない。自分の小さな生活の向上を期待しているのが庶民だ。抽象的な攻撃で勝てると思っているのが甘すぎるのだ。

 デモで盛り上がっても、選挙に勝たなければ意味がない。

 まずは、庶民の心に響くことを主張するところからスタートしなおさなければいけない。何か、あまりに腹が立ったから、書いたけど。与党だって本気で景気を回復したいなら、まず賃金を確実に上昇させる政策で選挙を戦わないとダメだと思う。リベラル側が軟弱だから、株価対策だけで勝てるのだ。きちんと、生活を成り立たせるレベルでガンガン賃金を上げるということを公約したリベラル勢力が結集するべきだ。

  ちなみにニューディールの世界観を今知ると衝撃が走る。

 大恐慌はそもそも過小消費が原因で起きたというのがニューディーラー主流の解釈だった。

 この過小消費の原因の一つが、労働者の交渉力が強大な資本にくらべてありにも弱い点だと思われた。そこで政府は労働者の賃金引き上げの方向が望ましいと判断し、労働者の交渉力を強化するためにNIRA第七条(a)項によって団体交渉権などを法的に承認したほか、賃金をコストとしてだけでなく、「購買力」すなわち景気回復に不可欠の要素として評価した。

 労働者の数が減少していく日本にあって、この観点が欠落しているのは、根本的に間違っている。たとえば民進党の支離滅裂な政策集にこういう視点はあるだろうか。まったくない。

 しかも、ニューディールの支出の大半は、大規模公共事業ではなくて失業者を雇用する様々なプロジェクトでしめられた。たとえば、三億点の衣類、五億七千万の学校給食、八千万冊の図書館の本の修繕、1460の保育施設の運営、百五十万人の読み書き教育、家内サービス人の訓練、州WPAガイドの出版など。絵画、彫刻、音楽、演劇、小説などのプロジェクトもあった。

 ローズヴェルトは、連邦政府による大規模な公共投資を梃子にして失業を吸収するタイプの政策にはおよび腰だった。そのイメージとは裏腹に、ニューディールは結果としてTVA(テネシー川流域開発公社)やPWAのような公共事業よりも、PERAやWPAのような救済事業に重点を置いた。

 この視点にならえば、ケインズが主張する公共事業による景気回復が本気で行われたことはなくて、正統派ニューディーラーにとっては、「目先の消費者の所得と自尊心の回復」が大事だったということだ。

 これは、ケインズが考えていた「期待の回復」と同じもので、ケインズの方が有名になり過ぎて教科書が見落としてきた、超根本的な視点だ。

 しかも、最近話題の「ベーシックインカム」的な議論もまったくもって笑止千万であることが分かる。大恐慌期に重要だったのは、「仕事を失った人々の自尊感情の深い傷」をどう癒すかであって、ベーシックインカムでは、そうした傷は癒えないのだ。多くの人にとって、自尊感情はまがりなりにも誰かのために仕事をして対価を得ることで、それをまずは手当しようとしたニユーディーラーの直観の方が正しいと思う。

 教科書的なケイジアンも、自助努力を大切にするアホな与党も必要ない。

 ただ、実質所得を上げれば良い。

 

時価総額/GDP比の現在値 2016年5月末時点

前回に引き続き、時価総額/GDP比の現在値(5月末時点数値)を調べてみます。

日本 87%(2014年4月末) → 92.5%(2014年9月末) → 112%(2015年2月末) → 111%(2015年3月末) → 112%(2015年10月末) → 104% 時価総額の参照数値が一部のみから一部二部その他合算に変更

アメリカ 102%(2014年4月末) → 106%(2014年9月末) → 108%(2015年2月末) → 107%(2015年3月末) → 107%(2015年10月末) →  102%

・計算式  時価総額÷名目GDP時価総額/名目GDP

 (過去から100%〜120%程度が高値圏と考えられる。バブル期の%の推移については、GDP/時価総額比率 1989年でGDP比率145.5%を参照。)

 ※参考データ

ここから想定される日経平均株価の高値のレンジは、ざっくり

 17,919円(108%) 〜 21,300円(128%)

 以上です。

人口が減っても全然困らないかも知れない 「ゴールド ― 金と人間の文明史」

 日本の人口が減ると、多くの議論だとこのままではダメだということになる。本当だろうか? 保育園は増やした方がいいと思うけど、国民の頭数を揃えないとマズイよね、みたいなことは本当はどうでも良いのではないか。

 もちろん、人口減少すると"国全体の"経済成長には良くない、恐らく国債を返すか返さないかで大揉めするだろう、でもそれで最終的に困るのは誰なのか、ということだ。ベースの生活水準はどうなるのかが大事なことだ。土地の生産力は変わらなくて、教育水準や技術力も同じであれば、個人や家庭としての国民自身はそれほど困らない可能性がある。もちろん、デフォルトした政府の後始末はあるだろうが・・・。もし仮に、政府債がデフォルトしても人々の生活が破綻するわけではない。ベースの生産力が突然減るわけではないから。そして、本当に人口が激減した前例がある。

 かつてヨーロッパで全人口の1/3~2/3が死んでしまったことがある。14世紀に猛威をふるったペストのせいだ。人口が激減したことで一人当たりの資産はすごい増えた。だからみんな暮らしが楽になってしまったのだ。食料事情も改善し、生き延びた人たちは仕事よりも楽しみに時間を遣うことができるようになった。

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 階級に関わりない平等な大量死は同時代人に絶望だけでなく、葡萄酒とパーティの享楽をもたらした。その辺りのことは、「ゴールド ― 金と人間の文明史」に詳しい。

amzn.to

 人口が減って農民にとって良かったのは、交渉力が高まったことだ。雇い主である地主や貴族たちは、働き手がいなくなると困る。だから、賃金が高くなったし農民の地位も高まったのだ。現代で言えば、非正規雇用のパートでも高賃金が要求できるようになるのだ。これって良いことなのではないのだろうか?

 農村人口の激減はかえって封建領主に対する農民の地位を高めることとなった。たとえば、イギリスでは労働者の不足に対処するため、国王エドワード3世が1349年にペスト流行以前の賃金を固定することなどを勅令で定めている。それ以外にも、領主は地代を軽減したり、農民保有地の売買を認めるなど、農民の待遇改善に努力するようになった。

感染症の歴史 - Wikipedia

  かつて、マルサスがいた18世紀の社会では、人口が少ない方が一人当たりの富が多いことは常識だった。この考え方は18世紀以前まではずっと変わらない残酷で過酷な現実だった。人間が食料を技術革新で増産すると、それに見合って人口が増えてしまう。だから、いつまで経っても人類はかつかつの喰うやくわずの生活で、ちょっとした気候変動で大飢饉が発生して、そのせいで戦争が起きてという負のスパイラルが止まらない。この現実に対してどんなイノベーションも勝てなかった。イノベーションそのものが、人口増加を生むという、まさに呪いが続いたのだ。人口が増えることが良いことだ、なんて観点は一切ない。

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 幾何級数的に増加する人口と算術級数的に増加する食糧の差により人口過剰、すなわち貧困が発生する。これは必然であり、社会制度の改良では回避され得ない、とする見方(「マルサスの罠」)を提唱した。

トマス・ロバート・マルサス - Wikipedia

 ところが、マルサスが悲劇の法則を発見したその瞬間、実は人類は空前の人口増加と経済成長が両立する時代を体験しつつあって、マルサスの理論は完全に覆されてしまった。結局、社会科学における変数は、何が決定的な役割を果たすのか、分らないので予測をしても無駄なところがある。今では、人口増加はイコール消費者の増加であって、市場の拡大を意味している。

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国連人口基金東京事務所|資料・統計

 だけど、日本の人口減少にともなって、明らかに有利になる予測可能な数字もある。例えば「食料自給率」だ。

 2013年の日本の人口は、1億2730万人、食料自給率はカロリーベースで39%、生産額ベースで、64%だ。2060年の推計人口は、8674万人になる。食料生産が現在と同じだったとすると、食料自給率はカロリーベースで64%、生産額ベースで、94%だ。*1

 これは、単位あたりの土地の生産性は変らないけれど、一人当たりの食料生産量が単純に考えて、+64%増加することを意味している。つまり、一人当たりの生産量が1年当たりでは、1.36%上昇することになる。(1年当たりに、単純に割り算しているのでもっと正確に計算した方が良いと思うけど)

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 あくまでもこれは仮定の計算でしかない。実際には生産に従事する労働者の数は足りるのか、とか、耕作放棄地はどうなる、とか色々あるだろう。それでも、食料生産だけでなく、その他の生産手段のことも考えると一人当たりの生産量は、飛躍的に向上すると予測するのが正しいのではないか。途中で政府はデフォルトしているかもしれないけど。

 一つの理由は、生産性をどう考えるかというところにある。

 前に生産性の定義の難しさについて書いたことがあるけれども、基本的には技術革新は、労働者の賃金が高い方が進みやすいと考えた。だから、それが正しければ人口が減ると労働賃金が上昇し、労働者の地位も向上するし、その圧力によって生産性革命を資本家が起こしたくなって、生産性が上昇する。

 資本があまり蓄積されていない状況では、食べていくためには自分で働くしかない。資本がたくさんあれば、他の国から買ってきて組み立てられる商品も、最初のうちは、自前で作って工夫して納品するしかない。そうすると、「労働」がとても貴重なものになる。資本が少ない世界では、資本を生み出すのは「人」でしかない。だから、労働者の賃金が上昇する。みんなどうしても人を雇いたい、だけど、資本が十分に蓄積されるまでは、みんなが人を欲しがるので賃金がなかなか下がらない。そうすると、資本家としては、人を雇う以外の工夫が必要だという結論に達する。

oror.hatenadiary.jp

  この「資本家としては、人を雇う以外の工夫が必要だという結論に達する。」という状況が、生産性に投資して、生産性が上昇し始めるために必要な条件なのだ。今の日本には、生産性を上昇させるトリガーが全くない。だから上昇しない。だけど、人口が減少すれば、このトリガーが起動し始める。賃金が上昇し、資本家や企業が持っている「資本」が労働力に対して相対的に減価し始める必要がある。

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 興味深いのは、人口の増加が急速であれば、生産量を飛躍的に伸ばす必要があるので、やっぱり労働力が必要なのだけど、急速に減っても労働力が必要かも知れないところだ。問題なのは、「労働供給のボラティリティ」なのかも知れない・・・。なだらかに人口減少を押しとどめてしまうと、このプロセスが起動せずに、生産性も低いわ、一人当たりの生産量も下がるわで、最も良くない結果になるかも知れない。

 この考え方を押し進めていくと、我々が体験しているのは「資本財」が人口の変化率の高さに弱いということで、つまり資本財の価格は、人口または、労働供給量(人以外も含む)の変化率の高さに対してかなり従属的に応答していることになる。いかなる資本でも労働力との結合がなければ価値を生まないので考えていけば当たり前なのかもしれないけど、労働供給量が安定すると、資本財は優位になって高止まりするのだけど、変化が激しくなると下がっていくのかも。そういう意味では、労働者が権利を主張するのは大局的には経済的合理性があると言える。 

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