帝国の構造

帝国の構造 を読んで面白かったのは、帝国の復活を柄谷行人が期待していたところ。

左翼最後の希望という感じなのか、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いということなのか、アメリカの帝国主義を破壊する勢力に最大限期待している感が伝わってくる。

帝国主義と帝国を分けているところが目新しくてよかった。

ここでいうところの帝国というのは旧帝国とも言われる、ロシア・トルコ・清帝国でもあり、その前身のモンゴル帝国でもあり、さらにはローマ帝国以前の帝国の起源たるペルシア帝国でもある。帝国の原理を備えた旧帝国は、国民国家をベースにしていないので、民族浄化的な思想がない(と整理されている)。

国民国家帝国主義よりも、旧帝国をベースに新しい価値観をそこに乗っけることで、カントの考えた永遠平和を実現させるぞ、というのが基本的なスートリーライン。ある意味、とってもわかりやすい。ただ単純化が強いので、これはこれで帝国主義者を撃滅せよ的な新しい浄化思想になってしまいそうなので、限界も感じた。

そもそも帝国と帝国主義を区別したのはハンナ・アーレントだと、この本で知って、「全体主義の起源」を読もうと決意。勢いで三巻本を書店で購入した。

柄谷行人の整理だと、今は第一次世界大戦以前に近いらしいけど、そうするとまた新しい全体主義を見ることにはなるので、大変恐ろしいことである。