ゴリオ爺さん 良かった一節

ゴリオ爺さんの良かった一節。

ウージェーヌ・ド・ラスティニャックは、パリにもどってきたとき、人並みはずれた青年か、あるいは逆境のせいで一時的に俊敏な能力を得た人間なら、だれでも経験するような気持ちになっていた。

上巻・p.61

この「逆境のせいで一時的に俊敏な能力を得た人間」という描写が、あるなー、と思ったので、思わずここに書きたくなった。

スーパー追い込まれると人は信じられない力が出てくる。リーダーシップとか、自分の中の知らない人格が出てきて状況を変え始める。寝る前には脳内のシナプスが新しく結合されていく様が見えるような感じがする、それくらい脳がバチバチいう、そういう瞬間がある。もう一度来ないかなあ、という麻薬的な思いがあるんだけど、生涯でも一度しかきていない。自分で途方もない逆境を作ればいいのかもしれないけど、なかなかそういう境遇に落ち込むものでもないものだなあと思う。予想してしまうと、ダメで、思いもかけないときにその状況に取り囲まれるということなのかもしれない。予想すると、リスクを計算しはじめるので、ヘッジされてしまう。予想していなくても時間的な余裕があればリスクは何かの代替手段で低減されていくので、時間的な期限が極端に小さくてリスクが激増していく瞬間が良いのかもしれない。

ああ、事故ったときは瞬間的には冷静になって判断していたかもしれないな。すごい一瞬すぎて特に変わったなーとは思わなかったけど、あるといえばあるのか。