金融情報とアート 『第10回 shiseido art egg 川久保ジョイ展』

金融情報を使ったアートを見た。銀座資生堂ギャラリーで開催中。

金融トレーダーから現代美術家へ、川久保ジョイの激動する半生

「イカロスの落水/水落」
日本の長期金利(10年物国債金利)が急速に上昇し、国債の利払いに耐えられなくなった政府が強制的に固定金利を適用するというシナリオを壁に投影して壁を研磨したという作品。

ダイダロスの滝/落命」
米ドル/円相場の過去20年とこれから20年を予測する。上記の固定金利適用に伴って、為替相場が反応すると考え、ドル/円相場が暴落して1960年代の水準に近づくという予測。二つの作品は向かい合わせの壁面に展示されている。

「千の太陽の光が一時に天空に輝きを放ったならば」福島の土中に埋めた銀塩フィルムが放射能に反応して発色する。東京で同じことをしても、真っ黒になるだけだと言う。

金融情報とは何か、人間にとって資本市場とは何かを考えさせる素晴らしい内容だった。

貨幣と資本を人工知能が取引する市場があれば、均衡点は理論的でゆらぎがないかもしれなけれど、人間が自己保存や自己複製の欲望を同時に持っているがゆえに、資本市場には、絶えず二つの役割が与えられているのだと思う。

「資本の再配分と最適化」と「人間の生存本能」の二面性が同時にひとつの数値に宿るために、その強い緊張関係が資本市場を通じた混乱の歴史を生み出す。ここが興味の尽きない、面白いポイントだと思う。ちなみに、投資家的には円安シナリオが実現するかどうかに影響を受けないポジションを構築することが、必要だと思う。起きても起きなくても関係ないポジションというか。