アメリカは経済が成長しているわけではない仮説、を導いてしまった・・・。

以前に調べていた国富のバランスシートについてもう一度考えてみた。そしたら、アメリカは別に経済成長しているのではないかもしれないというすごい変な仮説が出てきた。(正しく言うと、生産性の向上よりも負債がインフレで削減される資産効果が莫大すぎて、そちらのインパクトの方が大きいのではないか。)

前回考えた時は、アメリカやイギリスは民間・政府を合算した国全体のバランスシートを考えた時に、非常に負債が大きい。言い換えると自己資本比率が低いということを見つけた。そして、こういう経済にインフレが起きると不思議なことに負債の価値が下がるので純資産は増加するという現象が起きるはずだということを見つけた。

バランスシートが正しければ、そうなるはずだ。(厳密にいうと、その国の流動資産がどの通貨建で保有されているかによって変わる。だから、全てがこの通りになるわけではない。)

で、そのプラスはどういう形で経済に反映されるのか? これが良くわかっていなかった。仮説として、GDPの数値にこのプラス分が乗っかると実は生産性が上がっていなくても経済が成長しているように見えるのではないか、ということを書いていた。(けど、これがそれほどしっかりと論証できるとは思っていなかった。)

もう一度、このことを考えてみて、下の図を見直した。これはアメリカ経済のバランスシートと、インフレの場合にどう変化するかを示したものだ。

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インフレが75%進むと、自己資本比率は56.13%も増える。前回は、へーというところまでしか考えなかった。だけど、これが毎年2%のインフレで、どれくらい変わるのだろうか。このデータはエクセルで作っているから75%のところを2%にすれば良い。(このページから落とせます)

そうすると、こうなる。

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 増加幅は小さいけど、自己資本は増えている。この金額が実際にいくらかを見ていくと、

 1256531.28億ドル−1238000億ドル=18,531億ドル(今の相場で、197.47兆円)

になる。

これは、2019年のアメリカのGDPから2018年のアメリカのGDPを引いた名目値、8,500億ドル(213446.7億ドル-204940.5億ドル)よりもずいぶん大きい。

もしかしたら、これは資本収支のプラス側に出てくる数値の一部かもしれない。

少し前のデータだが、これがアメリカの資本収支の推移

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もっと詳細な検討が必要だけど、データから考えられる仮説として、アメリカのGDPの成長は部分的には、実はドル建で調達した負債の価値が下がっていることから得られていて、その負債を購入した国や企業・個人の資産がその分減っているのではないか。

アメリカの貿易赤字を帳消しにしているのは、このインフレによる資産効果も結構あるのではないか。何しろ、通常のインフレ率で、毎年1800兆円のプラスがアメリカの資本に生じているとしたら、軽く2年で日本の国富の金額に迫る・・・。これがアメリカの金融市場の強さに影響しないはずはないのでは・・・。

という仮説が出てきたけど、何か破綻しているだろうか・・・。