イノベーションは高賃金が原因で起きる

 「年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学」を読んでいて、いわゆるイノベーション産業は賃金が高くて、地域の雇用も産んで、地域のサービス業に従事している人の年収もあがるよね、だけど、製造業しかない街は、どんどん没落するよね、ということが書いてある。

 これは、前に考えていた生産性の定義にもつながる話だなーと思った。技術革新が起きやすくなるのは、労働者の賃金が高いからで、賃金が高いと経営側で労働者を代替する技術を開発するモチベーションが高まる。実際に世の中はそのように進んでいて、故に真にプログラマーとかデザイナーが不要になるイノベーションが広がるまでは、イノベーション産業だけが賃金が高止まりしたままになる。

前に生産性の定義の難しさについて書いたことがあるけれども、基本的には技術革新は、労働者の賃金が高い方が進みやすいと考えた。だから、それが正しければ人口が減ると労働賃金が上昇し、労働者の地位も向上するし、その圧力によって生産性革命を資本家が起こしたくなって、生産性が上昇する。

  この「資本家としては、人を雇う以外の工夫が必要だという結論に達する。」という状況が、生産性に投資して、生産性が上昇し始めるために必要な条件なのだ。

人口が減っても全然困らないかも知れない 「ゴールド ― 金と人間の文明史」 - ororの日記

 ぼくの結論としては、だから全産業の賃金を高めに誘導すれば、それだけでその国の競争力の底上げが図られると思っている。これを自然に任せると、必ず貨幣の数量が多くなって、デフレ型のバランスシートの国になる。そして、デフレ型だと労働力よりも貨幣が希少だと認識されるので、生産性を高める動機が資本側からどんどんなくなる。だから意図的に、貨幣の価値を切り下げるバランスシートにするか、労働力を規則的に高止まりさせていくことで、必ず生産性が上昇するようになる。

 けど、そのためにはインフレに火がつかないような国富のバランスシートが必要になる。例えば、賃金の引き上げと同時に不動産を国が接収したりしないようにした方が良い。