デフレとインフレの起源的な話「経営者・平清盛の失敗 会計士が書いた歴史と経済の教科書」

 平家滅亡の原因を、宋銭流通に求める本。すごい面白い。


  1. 宋銭の輸入が増える。最初は貨幣としての需要ではなく銅としての実需であった。末法思想の流行によりお経を、銅製の入れ物に入れておいて自分だけ救われたいという流行が背景。
  2. そうした、銅の実需が価値を担保して宋銭での税徴収などが順調に進展。
  3. 結果として、絹/米などのいままでの貨幣の価値が低下。
  4. 当時の借入金の利率が極めて高かったため返済が滞り、返済のための銭が求められるようになりデフレが進行。
  5. 平家が宋銭の輸入を握っていたため、権力は高まる一方。
  6. この状況に腹を立てた貴族たちの不満が高まり、後白河法皇平清盛の対立が激化。
  7. 似人王の乱を経て、源頼朝が挙兵
  8. 養和の大飢饉によりハイパーインフレが発生。貨幣によって資産を築いていた平家は急速に力を失う。
  9. 平家滅亡。

 なぜ、宋銭を輸入したのか?という理由としては、偽造貨幣問題があげられる。奈良時代にも和同開珎の発行による貨幣導入が図られていたが、偽造の横行により、貨幣の価値が下がってしまい信頼性を失っていく、という問題があった。当時は、貨幣に対する不信感が強く、貨幣を導入するためには、宋が発行している貨幣を輸入することで偽造できない状況で導入を進めることに意味があった。ところが、輸入をしたということは、デフレ傾向になった時に、貨幣流通を増やしてデフレを抑制することができない、ということでもある。

 また、そこからたぶんぼくが考えるに、貨幣が不足している状況で飢饉が起きると、米などの相対的価格が上昇すると、コメの貨幣的立場が急速に復活するということでもあると思う。だから、インフレ傾向が進んでいる時でも、やはり貨幣流通を増加させておいた方がインフレを抑制できた、という一見すると変な理屈が成り立ち得るかも、と読んでいて思った。