普遍経済学とは

普遍経済学というのがあるのではという話。

いま、哲学は面白い——近代哲学者の志に学び、新たな地平を切り拓け(竹田 青嗣) | 現代新書 | 講談社(1/3)

 これは完全にあると思いました。

どうやって普遍経済学に至れるか、を考えた。

  1. 経済学の指標が単年度のPL的な計測値しかもっていないこと
  2. 国富を基準にしてBSを見てみると、国家間のBS(財務諸表)の間で負債や通貨が果たしている役割が見えてくるだろう。過大に借り入れをしている個人が、市中にある通貨の価値を自ら変えることができたら・・・という比喩で考えられる
  3. 基準になるのは、ニューディール政策の判断基準だ。「仕事は、人々の自尊心を守るために必要だ」だから公共政策として「すぐに仕事として提供できるもの」を重視する。これは、現在の公共投資的な思考法と全然違う。論点は「自尊心」であって、公平性や格差の縮小ではない。社会の仕組みそのものが社会をつくる人に苦痛を与えることをしてはならない、という原則を徹底することであって、望ましい幅に格差を収めていくことではない。
  4. 現在の世界にないものを想像してみる。通貨の統一は答えではなかった。暴力を一部、国連に譲り渡すことはできている。つまり答えは徴税権の一部譲渡と、その大義を設定する必要があるということだ。構想されるのは、予算の一部を「全世界の人々の自尊心」のための基金にできるかどうか、ということだ。そして、負債と通貨交換と発行の機能の一部が徴税権だけでなく、譲渡される必要がある。なぜなら、恐慌時に負債以外の手段で仕事を提供することはできず、負債だけを負うのであれば、その「全世界の人々の自尊心を仕事で守る」世界的な政府機能はいつか破綻してしまうからだ。この機能は、負債で賄われると同時に、通貨発行を伴って負債を裏付けなければならない。
  5. この巨大な借り入れは、巨大であればあるほど、良い。なぜなら、デフレ傾向になりそうなマイルドインフレ的世界であれば巨額債務があればマイルドなインフレにより債務の実質額を削減していくことができるからだ。そのため、恐慌に陥るたびにこの世界的な政府機構に似た組織が発行する債券に裏付けられた(?)通貨は、大量に発行され、大量に市中の既存国家通貨を吸収し、次第に世界通貨のシェアを高めていくことができる。
  6. 新しい通貨の利点は、それが世界の統一通貨を目指す意図をもたないが、背後に裏付けとなる徴税権をほぼ持たないことだ。これによって、経済成長やその国家の信頼性とこの通貨の交換レートは相関しないことが保証される。それによってこの通貨は、ある意味でベンチマークとしての価値を持つことになる。国家から譲渡された徴税権は一部あるかもしれないが、ハレーションが大きすぎてそれはほぼ意味をなさないだろう。それよりも、この通貨が国家間で承認された大義である「自尊心を保つための仕事をつくる」機能をもっていること、そして、そのために負債を発行し、それを通貨で賄う権限を与えられていることが重要だ。
  7. この通貨が市中に出回ること自体もあまり意味をなさないかもしれない。支払いの際には自国通貨への両替が速やかに行われるのであれば、新通貨は市中でみかけることはないものになるのかもしれない。
  8. 重要なのは、失業に伴う「自尊心の喪失」に対する世界的な責任の所在を明らかにし、それを国民国家のイデオローグに利用させないシステムを構築することだ。通貨や負債の仕組みは副次的なものでしかない。

近代国家は、生産性という概念に基礎づけられて経済運営をしているけれど、生産性を導く経路が、「生産性以外の要因と考えられるものを除いた残余」だから、そこに財務的貨幣的な要因(インフレによる巨額債務の圧縮益)が乗っけられていても見分けはつかない。

だけど、「真実」が何であるかはどうでも良い。私たちが求めているのはワークする経済運営の原則だから、そこに生産性が収まりが良いかどうかだけが重要で、ぼくの考えでは生産性は収まりが良くない。なぜかというと生産性が高まれば、経済全体の優位性が高まり、他国に比べて生活水準が上がり経済の安定性が高まり、いざという時も財政出動により国民を救うことができるというロジックでいくと、必ず自国優先主義と保護貿易的な発想から逃げられくなるからだ。そして、保護主義でなくても、現在のように巨額の債務とマイルドなインフレによって債務利益を絞り出すタイプの経済運営がメインになっていく。そうすると、「生産性」が大事だという大義の根底が覆されているので、国家に対する信認が根本的なところで崩れる。そうして日本のように株式の国有化が進んでいくことに対して異論が出ないような形になっていく。

だから、その機能を国家から取り出した方が良い。国家とは関係なくどこにいても普遍的に「仕事を景気が悪くても安定して供給できる」だけのシステムを事前に作っておけるかどうか。世界のどの地域でもあまねく公共サービスとして提供できるかどうか、が大事だ。その機能は人権や司法と同じくどこでも同じ効力を持って働きかけるという前提をつくるべきだ。