ブレードランナー2049を見た。長いという評判だけど、長いとは思わなかったな・・・。環境映画としては最高で、街中のシーンとかずーっと見ていたい。再編集してまちの中のシーンだけにして、ずーっとエンドレスループさせたい。そういうとこは本当に良い。
風景だけ見せているカットとか、探索しているシーンとかの長さは長くてとても良い。けど、都市部を離れて郊外のゴミ捨て場とかに行き始めるとちょっと退屈かもしれない。映画全編の長さの問題じゃない気がするな。何かゴミ捨て場の土着化した人間たちの描写とか子どもがいっぱい囚われてる様子とか、散々描かれているからもう見たくない感じ。
どちらかというと、画の中の情報量の問題で、都市部を描いている時は、都市の生態系が感じられるから楽しいけど、郊外に出てしまうとそういう複雑さが感じられないからいまいちなんじゃないか。都市部の描写は本当にマジで良かったな。ずっと見ていたい感じ。
ストーリーそのものとか、エピソードの刈り込みをした方が良い、というのは別に思わなかった。ブレードランナーは前作も近作も別に、ストーリーとかテーマの良さとかはあんまり重要じゃないと思う。テーマとストーリーは、基本的にはハリウッド映画の場合には「生まれの貴族性」の話なので、だから何なのかというのはあんまりない。そこは、深遠さを出すための演出部分なので、そこを掘っても新しいものはないと思った。思ったけど、感想読んでたら、PKディックのマーサー教的な要素を入れ込もうとしているよね、っていうのは良かった。そういうのはあるかもしんないけど、ストーリーの根幹ではないからなー。*1
映画としては美術のすごさが、勝負どころなんじゃないか。ブレードランナーは基本的には環境映画なので、環境映画として面白いシーンが続くのが良いのではないか。そういう意味で、ひたすら追跡しているシーンの羅列とかはすごい良かった。物語が収束しはじめるとつまんないけど、あてどなく彷徨い続ける感じが良い。彷徨いをもっと伸ばして収束部分を切り詰めるんだったら良いかも。あのまま4時間くらい彷徨っていていも苦痛じゃないかもしんない。
あと、みんなが絶賛しているけど、ジョイは本当にマジで良い。ジョイを発明したのが本当に偉い。ジョイが出てきた冒頭のシーンだけで、本当に見て良かったと思う。あと、後半のでかいジョイのシーンが、主人公の決意のきっかけになるという名シーンっぽいやつはやや嫌いだった。何か別のやり方があるんじゃないかな。あれが一番良いやり方だったのかはわからない。大体その前にどこかで一回ジョイの広告カットは入っているから蛇足感があるような気がする。説明しすぎなのかな・・・。
あと、どんどんこのシーンに関しては思うけど、なんで一人で橋の上なのか、街中で大勢の中で同じ広告を見るとかでも良かったのでは。その方が正しいのでは。
『イノセンス』のラストシーンで、素子が上から降ってくるシーンとか、もしマーサー教っぽさを出すことにしているなら、何かその宗教性とかネットワークに溶け込んでいく何かとかを出した方が良かったのではないか。あんまりやると別の映画になるからできないかもしれないけど。
少なくとも、決意に至るシーンには映画としてのアクションが必要不可欠だと思うな。素子は垂直に落ちくる。ジョイは橋の横にいてビルに戻っていくだけだからな。画面を切り裂くような出現と、そのまばゆさと期待・ジョイが戻ってきたかのような錯覚と、それが広告でしかないと分かる落胆みたいなシーン内での激しい上下動が欲しい。何かこだわるけど、ジョイとの別れはもっとドラマがあったら良かったなぁ。
でも、冒頭のジョイが登場して雨に打たれてるあたりの方は本当にびっくりした。何というかサービスとしてありそうな未来を示しているのが素敵だった。ジョイそのものが、環境的な存在だから本当に良い。
彼女にはストーリーがないから良い。基本的には肯定しかしないし。その肯定性とかを深堀して、マーサー的なテーマも深堀すると、もっとPKディックの方向に行ける。何か分からないが、ジョイに関しては『暗闇のスキャナー』における最後に捜査官だったと分かる主人公の恋人のドラッグ中毒者仲間だと思っていた子とかを思い出す。
そうか、だから、もっと良かったのはジョイがウォレス社にプログラムされて主人公Kの行動をコントロールしてる、最後にアンテナを折る指示をしているのもウォレス社の指示、もしくは警察の指示、ということになっていたら最高だったかもしんない。
何か、あの描き方だとジョイの意志だけは「リアル」っていうことになってしまうので、それは良くないな。そこも含めて虚構にならないといかん。
とか、色々個人的な感想が大量に出てくるからこれは良い映画だな。すごい良い映画だ。