境界性パーソナリティ障害=BPD 第2版 (ボーダーライン・パーソナリティー・ディスオーダー)―はれものにさわるような毎日をすごしている方々へ

境界性パーソナリティ障害=BPD はれものにさわるような毎日を過ごしている方々へ」R・クリーガー、P・メイソン 星和書店を読んで抜き書きした。

関連書籍としては、下記がお奨め。臨床家視点だが、翻訳による違和感を感じないで済むし、ダイアローグが詳細で頭に入りやすいかもしれない。ただちょっと難しいかも。


境界性パーソナリティ障害=BPD はれものにさわるような毎日を過ごしている方々へ」から。

 p.84 ノン・ボーダーラインの人に共通する思考パターン
  信念:二人の間で生じる問題は、すべて私の責任である。
  事実:各人はそれぞれが50%の責任を負っています。

  信念:私には、ボーダーラインの人の問題を解決する責任がある。私がやらなければ、他に誰もやろうとはしないだろう。
  事実:ボーダーラインの人の人生を引き受けようとすることは、暗に、彼らには自分の面倒を見る能力がないと伝えているようなものです。また、自分自身に焦点を当てることによって、あなたは関係性を変える機会を無にしようとしています。

  信念:ボーダーラインの人に、私が正しいことをわかってもらえれば、問題は解決するだろう。
  事実:境界性パーソナリティ障害は、人の思考や感情、行動に深刻な影響を及ぼします。あなたにどれだけ説得力があっても、相手を思いとどまらせることはできないでしょう。

  信念:個人としての境界を設けることは、ボーダーラインの人を傷つける。
  事実:境界を設けることは、あらゆる関係にとって不可欠です。どちらか一方、あるいは双方が境界性パーソナリティにならなおさらです。

  信念:自分の状況を良くしよとうして何かをし、うまくいかなくても、うまくいくまで諦めるべきではない。
  事実:うまくいかなかったことから学び、新しいことを試してみることもできます。

  信念:ボーダーラインの人がどんなことをしようと、常に愛情、理解、支持、無条件の受容を提供しなければならない。
  事実:その人を愛し、支持し、受け入れることと、その人の行動を愛し、支持し、受け入れることとは、大きく異なります。実際、不健全な行動を支持し、受け入れることは、それを助長し、あなたの苦しみを永続させることになります。


p.91
  ■自尊心の喪失
 感情的虐待は、人の核心部分にまで傷をつけ、身体的虐待よりもひどい傷痕を残します。侮辱やあてこすり、批判、非難なども感情的虐待と共に、被害者の自尊心を、その人が状況を現実的に判断できなくなるまで蝕んでゆきます。感情的にひどく打ちのめされると、その人は虐待の責任は自分にあると考えてしまいます。感情的虐待の被害者は、自分には何の価値もないと確信するようになり、他に自分を必要としてくれる人は一人もいないと思うようになります。他に行く場所はないと考え、虐待の場にとどまり続けるのです。彼らの究極的な怖れは、ひとりぼっちになることなのです。


p.94
  ■過覚醒と身体疾患
 目に見えて怒らせる原因があるわけでもないのに、いつでも辛辣に責め立てるような人がまわりにいることは、大きなストレスとなります。ノン・ボーダーラインの人は、予測のつかないようなボーダーラインの人の行動を多少ともコントロールしようとして、「警戒している」状態にいる自分に気づくことがあります。警戒した状態でいるには、身体的にも心理的にも高い覚醒状態が必要とされるため、時がたつにつれ、身体に本来備わっているストレスへの抵抗力が失われていく可能性があります。その結果、頭痛、潰瘍、高血圧、その他の病気が現れるかもしれません。


p.95
  ■相互依存
 よくノン・ボーダーラインの人は、どんな代償を払ってでも、英雄的に親切な行動をとろうとします。彼らは愛する人を助けようとして、

 ・怒りを飲み込みます。
 ・自分自身の要求を無視します。
 ・たいていの人には耐えられないような行動を受け入れます。
 ・同じ罪を何度でも許します。

ボーダーラインの人の行動に我慢し続けることが、彼らの幸せにつながるということはまずありません。ボーダーラインの人たちは、自分の行動が好ましくない結果を引き起こすわけではないと思うようになり、変化しようという動機をほとんどもたなくなるからです。

「君は神ではない。君の責任じゃない。君がその人を良くすることなどできないんだ。君にできることは真実を受け入れることなんだよ。」


p.101
 第二部 自分自身の人生のコントロールを取り戻すこと

 ツール1: 自分自身の人生を大切にする
 ツール2: 行き詰まり感の原因を明らかにする
 ツール3: 理解されるように伝える
 ツール4: 愛情をもって境界を設ける


p.118
 愛情をもって離れましょう
 ・他の人の行動や反応に悩まないこと。
 ・他の人の回復のために、あなた自身を利用させたり、虐待させたりしないこと。
 ・他の人が自分でできることは、しないこと。
 ・危機的状況を作り出さないこと。
 ・自然のなりゆきで生じる危機を避けようとしないこと。


p.120
 ・私が原因ではない。
 ・私がコントロールすることはできない。
 ・私が治すことはできない。
 ・ボーダーラインの人から離れよう。
 ・ボーダーラインの人のやり方から抜け出よう。
 ・自分の人生を生きよう。


p.123
 あなたのことを、怖い人だとか、ひどい人だとか言うような人に耳を貸す必要はありません。あなたは自分で選択できるのです。あなたは知らず知らずのうちに、ボーダーラインの人に、過去にうまくいった行動を繰り返してもよいという許可を出してしまっていたのかもしれないのです。


p.128
 行動が間歇的に強化されると、報酬がなくなっても、行動がなくなるまでにより長い時間がかかります。


p.146
 <<境界は自分が何者なのか、明確にしてくれます>>
 ・自分自身と他人とを適切に区別することができます。
 ・自分自身の感情や価値を見極めたり、それらに責任を持つことができます。
 ・自分自身の感情や思考や価値が、自分という存在の重要な一部であると見ることができます。
 ・他人の考えや感情も尊重します-たとえそれが自分のものと異なっていたとしても。
 ・自分自身が何者であるかを明確にするという点で、他人の価値観や信念も等しく重要であることを理解しています。

 もしあなたがいつも他人の要求に振り回されていたら、あなたの人生はコントロールが失われ、螺旋を描いて落ちていくでしょう。ボーダーラインの人は、決まりを変えようとしたり、衝動的に行動したり、あなたの都合ではなく自分の都合に合わせるよう要求する傾向があります。境界がしっかりしていれば、このような行動に対処できますし、自分を操り人形のように感じることもなくなるでしょう。


p.158
 自分の要求がわがままなものだと思い込むことは、人々が陥りやすいもうひとつの罠です。…境界性を引いたり、それを押し通すことはわがままではありません。当然のことであり、必要なことです。ノン・ボーダーラインの人はたちの中では、ただ自分自身に注意を向けただけでも、それを「わがまま」だと考える人がいます。


p.161
 腹を立てたり、イライラしたり、あるいは実際の状況で激昂してそのやり方を忘れたとしても、気にしないでください。そうなって当然なのですから。訓練を受けた専門家にとってすら難しいことをしているのだということを忘れないでください。ほんのわずかでも前進したら、自分を褒めてあげましょう。


p.162
 ■争わないコミュニケーション技術を用いること
 聞き上手になること。たとえ身に覚えのないことで責められたりしたとしても、守り腰になったり無視したりしないでください。あなたには後で主張する機会があります。
 傾聴には集中力と配慮が必要です。あなたは話している相手にだけ集中し、自分が言いたいことは忘れなければなりません。
 傾聴の妨げになるものとしては、自分の論点に夢中になること、気が散るような考え、相手が言おうとしていることがもうわかっていると決めつけること、話し手のメッセージを自分の期待通りにねじ曲げてしまうことなどを挙げています。


 p.163
 「私」を用いて応えてください。あなたには他の人の心を読むことはできません。あなたがあなた自身の感情や動機について話し、相手にもその人自身の感情や動機について話してもらえば心配はありません。
 誰でも、自分の意図することが何なのか、人から言われたくはありません。


 p.164
 相手の感情や論点を言い換えることで、彼らの話しを積極的に聞いていることを示すことができます。しかしこれは、彼らのいうことに同意しなければいけないということを意味しているのではありません。


p.168
 弁護しない、否定しない、反撃しない、引きこもらない。


p.173
 ■スポンジをやめ、映し返しを始めてください。
 外に向かって行動化を起こすボーダーラインの人であれば、なまくらだとか、自分の苦しみに無関心だなどといって、ノン・ボーダーラインの人を厳しく責めるかもしれません。
 ボーダーラインの人の言いがかり、非難、不可能な要求、批判に巻き込まれないようにしてください。

 相手の感情を鏡のように返していく。感情を認め、どのように感じているのかを言葉にして表現していく。

 1.ゆっくり深呼吸する
 2.灰色の領域を見続ける
 3.あなたの感情とボーダーラインの人の感情をきちんと分けて考える
 4.自分の意見を承認し、心を開く
 5.タイミングをはかる。
 6.自分自身の気分にも注意する
 7.自分の感情は選ぶことができる、を覚えておく
  ※何を言われても、それを信じて罪悪感を感じるか、その言葉が真実でないことが分かっているから個人的には受け取らないでおくか、選択することができる。


p.178
 事実を言い争う必要はない。感情を取り扱うことが大切である。


p.183
 あなたは自分の意見や考えや感情を持つ権利があるという信念に立ち返る必要がある。


p.190
 どちらが正しいかはっきりさせたい、じっくり説明したい、議論したい、などという誘惑に負けないでください。ただ自分の言いたいことを見失わないようにしてください。「あなたはこんなふうに感じているのね。でも私の見方は違うわ」などと言えばよいでしょう。必要に応じてこれを繰り返してください。


p.195
相手に反抗して行動しているのではなく、自分のために行動しているのだということをはっきりさせてください。あなたは何度か自分がどうしたいかを主張して、よい結果になる可能性を強化する必要があるかもしれません。