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「なぜ、バブルは繰り返されるか?」の日本の近未来予測が面白い。

「なぜ、バブルは繰り返されるか?」(塚崎 公義) のアベノミクスの近未来予測が面白い。

下記のように過度な悲観にも、過度な楽観にも陥らない中間的な予測を立てていて興味を引かれた。これが妥当な将来予測かもしれない。

p.203
「事の始まりはアベノミクスによる景気回復であったか、その数年後に行われた大規模な景気対策であったかは措くとして、景気が長期にわたり拡大を続け、消費者物価が1%程度で安定的に推移していた時のことです。
 ドルは1ドル=120円レベルで安定していました。日銀の金融緩和はドル高要因でしたが、この水準だと輸出企業が大量にドルを売るので、ドル高がこれ以上進まなくなっていたのです。
 景気は拡大を続けていましたが、物価は上がりませんでした。女性や高齢者が大量に働きに出てきたこと、活発な省力化投資が行われたこと、技術集約型製品の輸出が増えたため、その代金で労働集約型製品の輸入を行ったこと、などで賃金水準がそれほど上昇しなかったいっぽうで、企業の生産性が向上したことにより、生産物1個あたりのコストが上昇しなかったからです。日本経済は、「インフレなき持続的景気拡大・経済成長」を実現したのです。
 バブル崩壊後、長期にわたって失業問題に苦しんでいた日本ですが、団塊世代が引退したこともあり、「買う人・使う人」はそれほど減らないのに「働く人・作る人」が減り、物の需給と労働力の需給が引き締まってきました。むしろ引き締まりすぎて、一度引退(定年)した団塊世代に、再雇用を申し出る企業が相次ぎました。
 …あるところで「労働力が余りもせず、足りなくもない、ちょうどよい時期」が来ます。これは、すばらしい時期です。近視の人が、加齢とともに遠視になる課程で、眼鏡の要らない時期があるそうですが、そうした時期が日本経済にも来るのです。筆者はこれを「最後の黄金時代」と呼んでいます。

 …労働力需給が引き締まってきたので、賃金水準は非正規雇用を中心に上昇し、正規雇用非正規雇用の賃金格差は縮小し、ワーキング・プアの問題も解消していきました。これにより、生活保護の受給者も減少しました。
 高齢者が働くようになったので、年金需給年齢は75歳に引き上げられ、働けない高齢者には「早期年金受給制度」が適用されることになりました。日本人は、「老後も仕事がしたい」という人が多かったので、国民も総じて幸福でした。高齢者が生き生きと働いているので、健康な高齢者が増え、医療費もそれほど増加しませんでした。
 いっぽうで、景気の拡大にともない、税収は順調に拡大しました。先述のように歳出は抑制されたので、財政赤字は順調に縮小していきました。もちろん、ゼロにはなりませんでしたが、「持続不可能で、いつかは必ず破綻する」と考える人は減っていきました。
 景気好調にもかかわらず、消費者物価上昇率が目標である2%を下回っていたため、日銀は金融緩和を止めることができませんでした。景気拡大により、企業収益は好調を続け、いっぽうで金融が緩和されていたため、株価は大幅に上昇しました。これも税収を増やし、財政不安を和らげ、それがいっそう株価を押し上げるという好循環も生じていました。
 そうしたなかで、日本は世界から称賛を浴びるようになります。「少子高齢化の最先端をいく日本が、失業もインフレもない持続的な成長を続け、しかも破綻寸前だった財政まで一息つくようになっている。すばらしい。二十一世紀後半は、日本を手本に先進国もまねをしよう」となったのです。
 海外からの日本株投資が増えたことはもちろんですが、日本人が日本経済に自信を取り戻して、株式投資を増やし始めました。

 …(これまで高齢者は金融資産をそのまま相続して投資しなかった、相続を受けるときもすでに高齢者なので、なおさら投資が行われなかった。)が、最近になって遺産を相続する世代は、こうした価値観を持っていない人も多く、高齢者の金融資産が株式投資にまわりやすくなっているのです。

 高齢者を含めた「全員参加型の株式投資」が始まりました。株高は景気を拡大させ、それが企業収益を拡大させていっそうの株高をもたらす好循環。さらに、株高と景気拡大が税収を拡大させて財政不安を軽減し、それがいっそうの株高と景気拡大をもたらす好循環などによって、株価は上昇を続けました。こうなると、惚れ込み型バブルです。株価はどこまでも上昇し…。」

 というわけで、バブルに至るための道筋が描かれているものの時間がかかりそうな雰囲気で描写されている。どこまで、本当にそうなるかさておき、タイムスケールが思ったよりも長くなるという予測が出始めているのは興味深い。その予測どおりに行動が広がり始めると、結果として崩壊が早まるのではないか、とも思うし・・・。