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「サイコパス・インサイド」 神経科学者が自分の脳を調べたらサイコパスだった!

今週のお題「最近おもしろかった本」

サイコパス・インサイド」

 神経科学者がふとしたはずみに、自分の脳を調べてみたら、自分がサイコパスだと知って愕然とする話。
 サイコパスは「共感性がない」けど、「共感性がない人」は自分が共感性がないかどうかを知ることができないので、納得できない、というコメディみたいな話。でも、エピソードを知れば、健常な人から見るとサイコパスっぽいなと感じる。
 ただ、サイコパスは、不安を感じないので、免疫系が低下することがなくて、病気にならないらしい。俗に言われる「馬鹿は風邪をひかない」的なものは本当にあるのだ。あと、「共感」と「不安」には、強いつながりがあるのかもしれないと思った。他人の目を気にしている人は、共感性は高いけど、その分不安が高くなるのかもしれない。

 情動の平板化の特徴としては、例えば交通事故を目撃し、犠牲者を助けようとした直後でも、まったくそのことを忘れてパーティに興じることができる、JFKが暗殺されたとき周りの人は動転していたが暗殺がどのように行われたかだけに関心が向かった、死体安置所で安置されている少女の家族がいるところで「なんて可愛いドレスなんだろう」と関心が少女ではなくてドレスに向かう、自分が窓ガラスを腕で突き破り手首から肘にかけてきってしまったが、冷静に解剖学者の目で、腕の腱を見つめていた。(p.164)
 自分の子供にゲームで勝たせることがない、人を欺くのが楽しいのではなく操作するのが楽しい。

 その原因を、脳の構造から考えると、脳の機能が年齢によって切り替わっていくという現象がある。思春期には腹側部ストリーム回路が先に成熟し、倫理性や道徳心、公平さに対する意識が敏感になる。著者の場合には、この時期に強い宗教性と奇矯な観念を伴う強迫性障害が発症した。通常は、青年期になるとこうした情動性や過剰な道徳心は、前頭前システムの背側部神経回路の成熟により、抑制されるようになる。腹側から背側へのこの切り替えは熱い、感情的で道徳に基盤を置く思考や感情を青年期の終わり(二十五歳頃まで)にはより成熟した論理的合理性へと転換させる。著者の場合には、この転換の時期に、腹側のシステムは休止し、背側システムが高進を起こしてしまった可能性がある。

 背側前頭前皮質は、扁桃体からの情動の情報と、眼窩・腹内側部皮質からの社会的・倫理的文脈を、比較し決断する機能を持っている。社会的・倫理的文脈の機能が低下していると、情動は論理によってしか抑制されなくなる。

 一方で興味深いのは、情動と倫理以外の二元論も脳にはあるらしいという指摘だ。

 「脳には…もう一つ別の第二の二元的回路がある。これに含まれている一方の回路は私たちの外界と私たちを結び付けている外界感覚・運動界をモニターしている。この回路は、脳の左右両半球の外側新皮質区画に位置している。この回路は私たち自身と他人の情動をモニターする働きをしている二つの半球間の内側中央部の皮質帯にあるもう一方の回路と相互に抑制しあっている。後者は、私たちが白昼夢にふけり、外界に注意を向けていない時にもっとも活発になるもので、「デフォルト(初期設定)モード・ネットワーク」とも重なっている。扁桃体や島皮質と同じく、その機能は明示的なものではなく、暗黙的なものである。つまりこれが機能しているなどとは私たちが気づくことはそうはない。…物的世界と情動世界をモニターしているこの二つの回路もまた相互に抑制的で、さらには双方の回路は背側前頭前皮質とも結合しており、その時点で注意を払うべきもっとも重要な世界はどちらか、ということを決定することにも役立っている。この回路は私たちの意識世界の第二の二元性を構成している。」