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「データの見えざる手」 人間行動はU分布する

・「データの見えざる手」
 人間の腕の動きを計測したら、正規分布ではなくU分布(ボルツマン分布/ ある意味ではべき分布的)なものになることが分かった。そこから、人間の組織的な動きを分子の熱エネルギーのように解いていく道があるのではないか、と仮説を立てることができるようになった。それを、従来の心理学の成果と結びつけることで、簡単な行動が人間の心理に影響を与え、ひいては幸福につながる行動の特定につなげた。また、そもそも仮説を持たずに人間の運動や移動データを大量に取得することで、売り上げ向上のためのポイントを見出すことができるようになってきた。

 

 人間の腕の動きを計測したら、正規分布ではなくU分布(ボルツマン分布/ ある意味ではべき分布的)なものになることが分かった。これは、驚くべきことで株式市場でも同様の分布が見られることが知られている。
 ファットテイルと正規分布

古くは数学者のマンデルブロが市場価格が正規分布するとされている通説では、データが説明できないことを発見した。多くの事象がべき分布であることが知られている。例えば、富裕層の存在の偏りもべき分布に従う。

 U分布とは、矢野によれば、「U分布の特徴は、対象となるイベントの頻度(あるいは密度)に着目すると指数関数に従う(これを数学的には指数分布と呼ぶ)一方で、対象となるイベントの間隔に着目すると、「1/Tの法則」に従い、このイベント間隔の発生頻度は「べき分布」に従うところにある(これは、1/Tの法則に従ってイベントを発生させて、その間隔の頻度分布をとるとべき分布になるということだ。)前述のバラバシ教授や中村氏が論文で、べき分布として報告しているのはこのためである。しかし、イベントの間隔がべき分布となる現象と、対象の頻度や密度がべき分布となる現象とは、まったく意味がちがう。イベントの分布がべき分布に従う現象は、より素直にイベントの密度を見れば「指数分布」に従う。このような実態を、著者は「U分布」と呼んでいる。」 [p.246 第3章 注1]
 しかも、このU分布が生まれるプロセスが半端じゃない。「やりとりが繰り返されるとU分布が現われる ランダムに玉を配置し、…マス目間で玉をやり取りさせてみよう。ランダムにマス目を二つ選んで、一方から他方に玉を1個移す。そして、これを繰り返してみよう。もともと、ランダムに置いた玉なのだから、そこからランダムにマス目を選んで、玉を動かしても変わらない、と思うだろう。…ところが…やりとりを繰り返すほど、玉の分布が「まだら模様」になっていったのだ。実は、このやり取りによって生じた「まだら模様」こそが、実社会のビックデータに普遍的な右肩下がりのU分布である。…能力の差のうよなものを仮定しなくても、確率によって偏りは生じる。いわば「繰り返しの力」がこの「貧富の差」をもたらしている。」 [p.32] 
 しかし、当然この理屈に疑問もあるわけで、下記のように実際に計算してみる人も現われた。「これっておそらく、if文の条件分岐(玉の数がゼロの箱は、外に玉を出せない)が本質的なんじゃないかと思います。」http://kiito.hatenablog.com/entry/2014/10/22/221742

下記も読んでみたい。

 一日の活動予算は決まっている。腕の動きで測られる活動的な時間帯域は、毎日その人の温度に応じて、一定に割り振られる。だから、一日同じような帯域の活動をずっと続けることはできない。

 人間の幸福感は、環境要因では10%程度しか影響されない。人間関係、お金、健康などはそんなに重要ではない。50%は遺伝的な要因で、残りの40%が、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方による。「行動の結果が成功したか」ではなくて「行動を積極的に起こしたか」がハピネスを決める。幸福な人はパフォーマンスも高い。仕事の生産性が平均で37%高く、クリエイティビティは300%高い。

 週にたった10分「今週よかったこと」を書くだけで向上する。

 また幸せな人は「よく動く」。「活動温度」が高くなる。

 コールセンターでは、休憩時間の会話を促進するために休憩を同世代の4人のチームで取らせたら、旧家時間の活発さが10%向上し、受注率が13%上昇した。スキルや、性格的な向き不向きは全く影響しない。ただ、活発度だけが重要なのだ。

 身体運動は伝染するのだ。コンビニエンスストアの売り上げ向上にも同じことが見られた。スタッフの立ち居地を一定の場所にすることをビックデータから解析し、指示を出すと、売り上げが向上した。因果関係は不明だが、接客時の活発さが向上していることから、接客時の活発さ→それを目撃した顧客に伝染→購入額の向上という関係性があると思われる。

 同様のことが、下記の書物からも言える。

 

 セールスマンの特徴として、話術や論理性、説得術など(相手の動作を真似すること)などはあまり重要ではない。大切なのは、伝染性の表情の豊かさである。相手を圧倒し、感染させる表情や動作の豊かさが、説得の際に影響する。つまり矢野の言う、「活動温度」はたまた「幸福度の高さ」である。

 また人間は無意識に会話しながら、ダンスをするように相手と同じリズムで身体を動かし始める。言葉も同じリズムに収まっていく。重要なのは、同期しているリズムの心地よさである。心地良い状態が維持されていれば、幸福度が高まり物が売れる。

 「データの見えざる手」に戻る。

 行動は続けるほど止められなくなる。「1/Tの法則」に行動は従う。メールの返信時間が遅くなるほど返信がされる確率は下がっていく。同様に続けることは止めずらくなることでもある。

 運の良い人は、人とのアクセスが高い人である。到達度の高い人ほど解決能力が高くなる。低いほど解決能力は低くなる。組織内の到達度を高めるために、ネットワーク図から、もっとも到達度を高める組み合わせを見つけて、ワークショップを開くことで、何と、開発遅延発生率を著しく下げることができた。組織としての課題解決能力を向上させることができたのである。

 <今後の課題だと思ったもの>
 なぜ、株価がファットテイルに分布しているのか、は、たぶん「情報が繰り返し交換される」からであるだろう。それは、他の人間の行動にも共通することだろう。
 だが、それを見定めてもおそらく、それ以上のことは分からない。調べなくてはいけないのは、人間以外の行動になるだろう。動物にもそれは当てはまることなのか。植物でも当てはまることなのか。そして、生物と無生物の間では違いがあるのか。
 「どこから分布が崩壊し始めるのか」を知りたいわけである。
 それが分かれば、「分布を決める要因」を知ることができる。それが、「単なる繰り返し」であるのであれば、無生物と生物に違いは見出せない。だが、正規分布とU分布(あるいはべき分布、ファットテイル)の違いはあるので、その違いを調べていかなくてはいけない。身長は正規分布するのだから、遺伝子レベルでは、正規分布が優勢なはずで、U分布ではない。ところが、遺伝子は情報を繰り返し交換している。なぜ?

 遺伝子には独立の法則があって、サイコロと同系の確率を生み出す。http://ameblo.jp/carogela/entry-11127579756.htmlでも、その遺伝子にも情報が交換されているはずで、その情報交換により正規分布が崩れないのはどうしてなのか。「独立性」という問題が立ちはだかるけど、まだよく分からない。

 つまり、こう考えていいのだろうか。半分は正規分布的なサイコロで決まることがあり、もう半分には情報交換によって、ゼロ空間からの移動を阻害するようなべき分布的な空間がある。じゃあ、この「ゼロ空間からの移動をしない空間(玉の数がゼロの箱は、外に玉を出せない)」を定義付ける基礎は何なのだ。