「ブラックストーン」

世界一の高給取り(670億円の年収だったこともある)CEOシュワルツマンが一代で作り上げたプライベートエクイティの歴史を描く。

絢爛豪華なシュワルツマンの誕生パーティーの様子から始まり、黎明期のLBOファンドの中で、名もないブラックストーンが、二人の創業者ピーターソンとシュワルツマンの個人資産を食いつぶしながら出資者をあてもなく探し回るところから、世界最強のファンドに成長していくまでを描きだす。

相場の崩壊局面ではギリギリ助かっているケースが何度か見られるが、その他のファンドと一線を画すのは、シュワルマンが損失を極度に嫌う性格であったことと、後継者を育成することを考えて実現していたところだという。

またプライベートエクイティは、出資者から長期の投資を任されており、買収した企業を短期間で売却することはしない。
基本的にはバリュー投資であり、相場が底をうった局面で買収を行い、評価が上がったところで売却する。
また、買収した企業に借入金を起こさせて配当金を支払わせることで投資資金を安全に回収するが、ハイエナのようにリストラのみを繰り返すこということはなく、ほとんどのケースで企業価値が向上している。
買収を伴う大規模な経営戦略を遂行する際に、単年度の収益の悪化が株主に容認されない、などのケースでは、プライベートエクイティに買収されることが望ましい場合がある。
毎年の利益が安定してから、再度公開し、プライベートエクイティは手を引くというのが、一番良いパターン。

不動産会社への投資では、ギリギリで崩壊した市場から抜けることができていたが、多分に運だったのではないかという感じも受ける。

バフェットとの違いは、部下を用いて彼らに儲け話を提案させて実行させているところにあると思った。
また、借入れ金を用いて買収することが通常であるため、バフェットのようなキャッシュでの投資を重視している投資手法とは異なっている。
ただ、同じところもあり、そこが重要だと思う。まず、バリュー投資が基本的な考え方であるところ。キャッシュフローの五倍〜6倍までの値段で買うのが通常。それ以上では買わない。

ライバルとの桁違いの金額による派手な買収合戦や、立ち上がりの時期に、ピーターソンが学究肌を活かした「賢者キャラ」でトップ営業して案件をつかみ、シュワルツマンがまとめ役として引き継いでいくなどの起業苦労話、案件を受けるかの会議でのパートナー同士の争いや意地の張り合い、ディールがまとまるまでの手に汗握る攻防など、全編が見せ場に事欠かない、素晴らしい本だと思いました。