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「バリュー投資の強化書」は決算書の読み方を勉強できるスグレもの 

決算短信の、各項目の注記の意味が分からなくて、読み飛ばしている。でも、何か大事なことが書いてあるのでは?と思っていたり、そもそも、貸借対照表のどこを見たら、良い会社が見分けられるのか分からない、という投資中級者に最適な本です。
バフェットなど海外投資家の本を読んでも、日本の会社の決算書の読み方までは細かく学べないので、かゆい所に手が届いた!という喜びがありました、個人的に。


以下、ポイントを抽出します。

・現預金が少なく、売上債権と棚卸資産が多い会社は投資対象外
 (売上債権回転月数 4カ月以上、棚卸回転月数 機械メーカーなら平均3カ月以下、当座比率80%以上が目安)

・営業黒字なのにキャッシュフローが赤字は要注意

決算短信の「事業等のリスク」の欄に、ビジネスモデルが崩壊しているサインが書かれている可能性がある。

棚卸資産が過大だと、在庫の価値が無くなった途端、債務超過になる可能性がある。

・業績悪化のパターン
 「事業環境の変化に対応できず」→「売上債権、棚卸資産、無形固定資産が増加し」→「業績が悪化する」
 決算書を読めば、業績悪化の兆候を確認できる。


・決算書のチェック項目
 1)利益、資産、CFが伸びているか。
 2)ROICが伸びているか。(投下資本利益率=当期利益÷投下資本(総資産−現金同等物))
  設備投資を行うことで、利益率を効果的に向上させることができているかどうかを確認する。
 3)アクルーアズはマイナスか。(会計発生高=会計利益*1
  10%以上が望ましい。
 
貸借対照表のチェック項目
 1)利益剰余金が増加しているかどうか。
 2)現金および預金が増加しているかどうか。(儲かっているかどうか)
 3)棚卸資産が減少、もしくは売上に応じた増加に収まっているかどうか
 4)有形固定資産が増加しているかどうか。(設備投資が増加しているか)
  5)短期借入金と長期借入金が減少しているか。(借入金は減っているか)


・有形固定資産の減価償却方法
 定率法と定額法がある。
 定率法がのぞましい。定額法だと当初の利益がかさ上げされることになる。

・投資CFがプラスだと資産の切り売りをしている可能性がある。

有価証券報告書の「事業などの概要」から、その企業のプロダクトライフサイクルを割り出すことができる。
 キヤノンであれば、「事務機器業務」は、"金の生る木"。「カメラ事業」は、"花形事業"。「光学機器及びその他」は"問題児"。「アナログカメラ」は"負け犬"。

・規模型事業(自動車など)はスケールメリットが働くが、分散型事業(商社など)はスケールメリットが働かない。ソフト開発であれば、パッケージソフトは規模型事業だけど、受託型個別案件は、分散型事業。


・ファイブフォース分析
 1)新規参入の脅威 
  -スケールメリットが働かない(分散型事業)
  -製品が差別化しずらい
  -大規模な投資が不要である
  -既存事業者にコスト面で有利性がない
  -流通チャネルへのアクセスが容易
  -政府の規制が少ない
  -既存業者の報復見込みが小さい

 2)業界内の競争
  -似たような競合企業がたくさんある
  -業界の成長性が低い
  -製品の独自性が小さい
  -スイッチングコストが低い
  -固定費が高い
  -設備投資を小刻みにできない
  -撤退障壁が高い(サンクコスト、経営者のこだわり、地域とのつながり)
   *高いコストをかけて工場を作ると、回収できるまで続けるしかないという状況に陥り、お互いに泥仕合になる。

 3)代替品の脅威
  -代替品のコストパフォーマンスが高い
  -代替品を提供する企業が高収益である

 4)買い手(販売先)の交渉力
  -買い手の寡占化が進んでいる
  -買い手にとって製品の独自性が重要でない
  -買い手にとってスイッチングコストが低い
  -買い手による川上統合の可能性が高い
  -買い手にとって重要性の低い顧客である
 5)売り手(仕入先)の交渉力
  -売り手の寡占化が進んでいる
  -売り手の製品の独自性が強い
  -売り手を変えるスイッチングコストが高い
  -売り手による川下統合の可能性が高い
  -売り手にとって重要性の低い顧客である


・参入障壁と撤退障壁
 どちらも低い → 外食、小売、学習塾、システム開発
 参入障壁高く、撤退障壁が低い → 飲料、医薬品、トイレタリー (長期投資にお薦め)
 ともに高い  → パルプ・紙、鉄鋼 (景気循環 新規参入も撤退もない)
 参入障壁低く、撤退障壁が高い → 戸建住宅、マンションデベロッパー (淘汰後に新規参入企業が成長する時期が良い)

・競争要因は有価証券報告書の【事業などのリスク】からわかる。
 記載内容を、ファイブフォースにあてはめ直す。
 
・ハイテク、ミッドテク、ローテクでいうと、ミッドテクが一番良い。
 "新規参入しにくく、技術の変化もそれほど激しくない"ため。ハイテクすぎるとテクノロジージャンプされるため。

・ビジネスモデルは3つある。「コスト優位型」、「高付加価値型」、「ニッチ特化型」
 高付加価値は、"非価格競争"で勝つ。例えばポルシェなど。

・収益の上げ方には二種類ある。ストック型とフロー型。マンションを売りきるのがストック型。マンションを賃貸するのがフロー型。
 フロー型の方が収益が安定する。小口顧客に継続的にサービスを提供している、鉄道や電話・水道などがそれにあたる。

・天井圏の特徴。「一般紙、女性誌が株式特集を組み始める。料理教室の会報にまで株の話が系差入れる。IPOの質が低下して量も増える。カリスマ投資家、有名ブロガー、株式アイドルの出現、サラリーマンをやめて専業投資家になる人が現れる、信用取引が増加する」

・参入障壁の低い業種は「息切れ型成長株」になりやすい。一時は起業家の熱意で盛り上がるが、いずれ余生に突入する。

・投資に向く、理想のビジネスモデルは、「規模の効果が働く」「非価格競争力を持っている」「小口顧客に対するストック型ビジネスである」
 (セコムが近いのではないか)

・見せかけのV字回復 → 会計基準減価償却方法を変更して利益をかさ上げする。
・過剰在庫     → 棚卸資産が過大で減少しない。しかも資産を切り売りして借金を返させられている。「連結財務諸表に関する注記事項」に「財務制限条項」がついていて、何かあれば強制返済させられるようになっている。
・無形固定資産が無価値になる → 突然過大な無形固定資産を計上し、新規事業の立ち上げに失敗して、すべて無価値になり次期に大幅赤字。

*1:経常利益×0.6)-営業CF)   会計上の利益が現金収入を伴っているかどうかを確認する。  4)CFROAが伸びているか。(キャッシュフロー資産収益率=営業CF÷事業用資産(総資産−現金同等物