「バフェットの株式ポートフォリオを読み解く」記載の優良株の将来価値算出手順と計算サイトの紹介メモ

「バフェットの株式ポートフォリオを読み解く」は、短く的確に、バフェットの銘柄選択の基準、選択する企業の将来計算方法を示している。あまりにも単純で短いため、本書の重要性が見過ごされそうだが、優れた内容であることは間違いない。もし、バリュー&成長優良株投資を志すのであれば、必ず学びが得られる本だ。

本書が示すバフェット流の銘柄選択のルールは明快だ。(本書の紹介に、別書を参考にして要約し直している。)<銘柄選択ルール>
1)長期にわたって高い収益を上げる企業を見つける。できれば50年以上、同じサービスや製品を提供し続けている企業を見つける。
 (具体的には、高いROAおよびROEを実現していることを指す。)*1

2)その高い収益力を持つ企業が競争に負けないことを確認する。
 (将来、強力な競合の出現によって敗退する可能性はないか、巨額の研究開発費を投じ続ける必要はないか、を確認する。競合の事業報告書と読み比べる方法が効果的。また価格競争力が支配的である分野も望ましくない、例えば航空産業。)

3)その高い収益力を持つ企業が安い価格になったときに購入できる「現金」を持ち、機会を待ち続ける。場合によっては、3年間でも。
 (いかに優れた企業を見つけたとしても、安い価格で購入できないのであれば意味はない。バフェットは相場の天井の2〜3年前に売却を行っており、キャッシュを持っていることを重視している。これができないと、相場が崩れ始めたときに、損切りをすることしかできず、改めて購入する余力がなくなってしまう。極めて極めて重要な概念。)

4)最後に、最も重要なことだが、その企業の利益が「長期に渡って成長するかどうか」を確認する。


この四番目の確認手順は、やや計算を必要とするが、本書に紹介されているサイトを活用すれば、それほど困難ではない。
以下に、手順を確認する。<将来収益算出方法>
1)計算する企業の過去10年分のEPSの実績値を準備する。

2)その企業のこれまでの利益成長率を求める。
 下記のサイトを利用する。
 Return Rate (CAGR) Calculator

 ・10年前(2001年)のEPS数値を、Present Value:に入力する。
 ・最新(2011年)のEPS数値を、Future Value:に入力する。
 ・期間(10年間)を、Years:に入力する。
 ・calculatorを押す。

 得られた数値が、この企業の想定利益成長率となる。

3)10年後の、この企業のEPSを求める。
 得られた成長率をそのまま、現在のEPSにあてはめて将来の皮算用をする。

 下記のサイトを利用する。
 http://www.investopedia.com/calculator/fvcal.aspx

 ・現在のEPS数値を、Present Value:に入力する。
 ・先ほど得られた想定利益率成長率を、Interest Rate Per Time Period:に入力する。
 ・知りたい将来の年数をNumber of Time Periods:に入力する。(本書では10年後)

 得られた数値が、この企業の10年後の想定EPSとなる。

4)10年後の、この企業の想定株価を算出する。
 得られた想定EPSから、将来の株価を算出する。
 ・過去10年間のその企業のPERを調べる。*2
  その中でも、最も低いPERを採用する。
 ・「想定PER」×「10年後EPS」=10年後の株価
  となる。

5)10年後の株価から、投資収益率を算出する。
 得られた将来の想定株価から、現在の株価で購入をした場合の収益率を算定する。

 先ほどの下記のサイトを利用する。
 Return Rate (CAGR) Calculator

 ・現在の購入株価を、Present Value:に入力する。
 ・10年後の将来株価を、Future Value:に入力する。
 ・投資期間(10年間)を、Years:に入力する。

 これで、想定される年平均収益率が得られる。

この得られた年平均収益率を複数比較して、投資の妥当性を判断する。
最も収益性の高く、価格が(できれば)有形純資産を下回っていてリスクが限定的な投資対象に投資を行う。

*上記の他に、純資産の成長率から投資適格であるかを測る方法もある。

*1:ただしこの本の中では、ROAもしくは、ROEを基準に選択しているわけではない。高ROE投資の有効性については、この記事が非常に参考になる。米国の高ROE銘柄への投資(ナレッジ・パソコンスクールの投資講座) 右のサイトも非常に参考になるバフェットの株式投資の判断基準 また割安かどうかを一括してスクリーニング判定する方法は別書が参考になる。ジェエル・グリーンブラッドの方法だ。PER順と、ROA順ですべての銘柄をランキングし、それぞれの順位を足し算して、合成順位を作成する。順位の高い企業の株式を購入することで、年率16%以上の利益を上げることができる。

日本企業をスクリーニングする場合には、会社四季報のCD-ROMなどを使用するとできるのだが、手順がやや複雑なため別途記事化したい。

*2:過去のPERは会社四季報や日経会社情報で過去3年のPER値を調べることが可能。 あまり過去にはさかのぼれないが、規模別・業種別のPER情報は東証が提供している。http://www.tse.or.jp/market/data/per-pbr/index.html