近未来予測2025 フューチャーアジェンダ

近未来に何が起きるのかをテーマにワークショップを世界で開いて専門家の意見を集めたという本。12のテーマが設定されている。

 

1・人口が爆発的に増加する

食料廃棄を減らすことで食糧の供給に対処できるのではないか。また牛肉の消費量は減らすべき。進む都市化に対して都市プランナーの役割は大きい。

2・資源が枯渇する

化石燃料からの脱却。安全な水の確保、水の再利用などは必要。銀と亜鉛2032年に、銅は2045年ごろに、チタンは2060年ごろに枯渇。リン肥料の不足と価格の高騰は2030年ごろにやってくる。これらの資源の解決めどはたっていない。

3・環境汚染に歯止めがかからなくなる

大気汚染への早急な対応が必要。また海洋汚染では2050年ごろにプラスチックの廃棄に対応できていなければ問題になるだろう。地球温暖化については根本的な対策はない。

4・移民は悪だ

移民政策が成功している国は少ない。カナダは少ない成功例だが他の国では増加するニーズに対して感情的な排斥論が台頭するばかりだ。

5・仕事が不足する

老年者が長く働き続けることで若年層の雇用が不足するだろう。技術の進化も雇用を奪う可能性がある。

6・女性の雇用水準の向上が、多くの問題を解決する

貧困からの離脱や、人口の抑制、健康と教育の普及、そして女性の労働参加による経済成長など、良い面がたくさんある。

7・技術が大きな問題を解決する

医療、エネルギー、輸送、食料生産などの面で技術は力になるかもしれない。だけど、地球温暖化や肥満などに対しては有効な技術的な手段はない。政府間の協定や保険会社の商品が解決するかもしれないけど。

8・答えは太陽エネルギーにある

太陽光エネルギーの普及は、ワット数あたりの発電コストの低減と規模の経済にかかっている。しかし、各国の補助金や技術革新のスピード・投資の持続には不確定性がある。

9・定年について考え直す必要がある

年金財源が寿命の延びに追いつかない。つまり定年を延ばす必要に多くの国が迫られるだろう。

10・医療費は増大の一途をたどる

対策としては予防医療の充実や、今までの常識を疑った簡素な医療によって劇的にコストを下げた手術など(インドでは西洋の一流病院とそん色のない医療を、わずか2%の治療費で行う)。

11・アジアの世紀がはじまる

インドか中国の時代が始まるけどどっちなのはわからない。だが、2025年から35年までに人民元が世界の基軸通貨になることはないだろう。2045年から2055年ごろまではドルがいまの地位を維持するだろう。その後に、本格的なアジアの時代が22世紀を目指して始まることになる。

12・GDP成長率は、社会の発展を評価する最適な尺度である

資本を多面的にとらえて企業の業績を評価する方法を主流にするという声が大きくなっていくのではないか。

 

時価総額/GDP比の現在値 2018年4月末時点

前回に引き続き、時価総額/GDP比の現在値(4月末時点数値)を調べてみます。すでに終末まできている感じしかない。

日本 87%(2014年4月末) → 92.5%(2014年9月末) → 112%(2015年2月末) → 111%(2015年3月末) → 112%(2015年10月末) → 104%(2016年5月末) → 115%(2017年1月末) → 113%(2017年6月末) → 123%(2018年4月末)  

時価総額の参照数値が一部のみから一部二部その他合算に変更

アメリカ 102%(2014年4月末) → 106%(2014年9月末) → 108%(2015年2月末) → 107%(2015年3月末) → 107%(2015年10月末) →  102%(2016年5月末) → 114%(2017年1月末) → 117%(2017年6月末) → 121%(2018年4月末) 

・計算式  時価総額÷名目GDP時価総額/名目GDP

 (過去から100%〜120%程度が高値圏と考えられる。バブル期の%の推移については、GDP/時価総額比率 1989年でGDP比率145.5%を参照。)

 ※参考データ

ここから想定される日経平均株価の高値のレンジは、ざっくり

 17,919円(108%) 〜 21,300円(128%)

 以上です。

何となく、グラフにもしてみた。

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関税によって、経済はどうなるのか

関税がもし定着して貿易量が全体として下がり始めた場合何が起きるのか。

一つは、貿易による収入が減少して世界的に不況とデフレが広がり始めるということが考えられる。なので、当面はやっぱりデフレ懸念がある・・・。

債務国は1920年代にアメリカ合衆国に負債の免除か少なくとも負債の軽減を行うことを強く要求した。対するアメリカ政府はその要求を拒否した。代わりに、アメリカの銀行が欧州諸国に対して大規模な貸し付けを始めた。そのため、負債(と賠償金)は古い負債を増額させて新しい負債を積み重ねることによってのみ支払われる。1920年代後半には、特にアメリカ経済が1929年以降に弱体化してからは、欧州諸国がアメリカからさらに金を借りるのが困難になった。同時に、アメリカの高い関税によって、欧州諸国が商品をアメリカ市場で売るのが非常に困難になった。借金を払い戻すために貿易によって収入を得ることもできず、欧州諸国は債務不履行を起こし始めた。

世界恐慌の原因 - Wikipedia

戦前の日本も大恐慌が始まる前からデフレ傾向が続いていたことが見て取れる。かなり長く大正10年ごろからすでにデフレ傾向・・・。

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アベノミクスで株価はどうなるか - ororの日記

 ちなみに、1)の前提はちょっと違う気がするけど、2)以降は意外と正しい感じになっていた感じがする。

1)世界の人口増加によって、各国が化石燃料資源を取り合うようになる。

2)地政学が重要になる。どの地域に国が位置していて化石燃料資源にアクセスしやすいかが重要になる。
 そのため軍事費も増大する。

3)緊張の高まりと、化石燃料へのアクセスを優先化するために地域毎に覇権国家を中心とした経済圏のブロック化が進行する。化石燃料の価格を上げるためにカルテルと軍事的な行動や威嚇が用いられるようになる。

4)資源国と、軍産複合体企業に資金が流れ込む。
全体として資源インフレ基調になり、先進国企業が利潤を確保するために労働分配率を低下させる。
そのため、先進国中間層が減少する。先進国消費者向け製品の伸び率が鈍化する。

5)勝者となる企業は、国家によって経営されているか、国家によって価格や販売先を保障されている。
軍事力が背景にある、旧来の資本主義がよみがえる。
20世紀型のマーケティング重視企業は、富裕層向けに差別化できない場合は消費者の没落と命運を共にする。

6)日本のような消費者向け商品が強い国は、貿易での優位性を失うため、次第に機械産業や軍需産業、エネルギー産業などに提供できる付加価値が高い製品への設備投資を増加させる必要に迫られる。つまり、経済的な理由によって武器三原則などを撤廃する動機が高まる。(哀しいことだが・・・。)
 一方で、消費者向け産業は衰退し始める。

 

参考例)
ロシアの経済制裁イギリスは参加していない。
これは、ロシアの富裕層や企業の資金決済をイギリスの金融界が引き受けることを示している。
つまり、経済制裁は機能しない。
また、イギリスBPはすでに多額の資金をロシアに投資しており、グローバルな資本はロシアの行動によって利潤を得る道を探していることも示唆されているだろう。

資本の自由化以降、日本の景気対策費も、実際には国内の設備投資に向かうことなく海外に流出した可能性が考えられる。(金額の推移などを確認する必要があるが。) 
資本の利潤は、「稀少性」を物理的に軍事的に創り出すような力学を働かせ始めてもいると想定もされるだろう・・・。端的に言えば、かつての植民地資本主義と同じように、利益を得るためには軍隊が必要な時代になってきている。あるいは、国家が資本家の利益のために使われる時代になってきている。 投資家目線では、予測はある程度しやすいと言えるが道義的には問題が大きく、個人の利益は犠牲になっていくだろう・・・。

今後の世界経済と投資 - ororの日記

 

 

全ての世界中の「中流」が深く傷ついている

 クルーグマンが激しく絶望している。世界の民主主義が次第に崩壊し、一様に民族主義的な政権がうまれていく。アメリカでもトランプが、保護主義的な主張を繰り返す、これはなぜか。なぜ世界は、第二次世界大戦前のブロック経済化のような形に向かおうとするのか。ここまで同じパターンが繰り返されるのは、避けられない構造があるからだとしか思えない的な絶望。

digital.asahi.com

クルーグマンのコラムは以下のような感じ。イタリアの政権交代EU離脱の現実味が高まるにつれて、今後の世界について最悪の事態もあり得るという見解に・・・。

どのような結果を迎えるのかは誰にもわからないが、欧州の他国の事情を見ると、いくつかの恐ろしい先例がある。ハンガリーは事実上、一党独裁国家となり、民族主義イデオロギーに支配されている。ポーランドも同じ道を進んでいるようだ。

 より緊密な経済と政治の統合を土台として、平和と民主主義、そして繁栄を目指した「欧州計画」。その長い取り組みの何が失敗だったのだろうか。すでに述べたように、単一通貨ユーロという大変な誤りによるところは大きい。ただ、一度もユーロ圏に加わらず、ほぼ無傷で経済危機を乗り越えたポーランドでも、同じように民主主義が崩壊しつつある。

・・・(エリートたちが)起きていることに向き合おうとしなかったことで、傷はさらに深まった。

・・・そして今、米国は、ハンガリーの与党に負けず劣らず、民主的な規範や法の支配をほとんど尊重しない政党によって統治されている。

上記の「起きていることに向き合おうとしなかった」というのが重要だと思う。誰に向き合わなかったのか、これはすでにマイケル・ムーアがトランプ当選前に指摘していたことだけど、それはつまり全ての世界中の「中流家庭」が深く傷つけられている、というたったこれだけのことだ。

www.youtube.com

 難しい理論は、何もなくて、民主主義を採用している限り、資本主義と確実に対立するのはここだと思う。資本主義の勝者が生み出され、その資本が拡大することを止められない場合、民主的な主権者である「中流」階級が、資本蓄積が大きくなり始めると怒りだす。この繰り返しのパターンは止められない。善良な人々の心の中の正義感によって、民主主義そのものが破壊される。

 資本の偏りは、それだけで、不公平感覚を生んでしまう。それによって実際に損なわれているものがわずかでも、今の世界の状況が示すように嫉妬は資本家の予想を超えて爆発する。必ず、何かが正しくないという意識によって、独裁的で資本家を超える政治権力が万人に望まれて出現し、政権を掌握し、軍事力を他国へ誇示し、経済をブロック化し、そして貿易が停止される。貿易の停止によって起きる経済後退が、さらなる怒りを生み、戦争に繋がるだろう。

 そのためこのシステムは、民主主義か資本主義のどちらかか、両方で訂正が必要だ。

 民主主義の訂正は、政治権力に対する内部統制の仕組みを構築することによって多少は変えられるかもしれない。

 資本主義については、資本蓄積の結果を否定して訂正する仕組みが必要だ。それは税であり、中流階級への無制限の公的給付それこそベーシックインカムのようなものかもしれない。そしてもう一つの解決策が、バランスシートの状態そのものを政策目標にすることだ。年度毎の経済成長率や歳入/歳出を目標にするから、正しい結果が得られない。根本的には、人びとの価値観を規定しているスコアボードそのものを望ましい状態に持っていくことが良いことだと思う。それはつまりゲームのレベルデザインだ。

 ゲーム世界の満足感を損なわないことは、ゲーム運営者の当然の責務のはず。民主主義は、運営者自身にその世界をゆだねているはずだから、ゲームの仕組みを変えることも発案して実行して良いのでは。

 まだ完成してないけど、以下に前に書いたことをもう一度はっておいて、さらに考える。

 予測としては、デフレの発生確率の方が上がってきているのではないか、ということなのかも。もう少し考えてみないといけないかもしれないけど。信じられないことだけど、さらにもう一段階深いデフレに見舞われる可能性もないではない・・・。

 

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住宅ローンを組むと金利上昇時に儲かるかどうかを考えた

住宅ローンを低金利下で組むと、金利上昇がもし起きれば投資効果が高いという説があるので、それを検証してみた。ゴールデンウイークだし、子どもは熱が出ているし、久しぶりにエクセルと向き合ってみたくなったので・・・。

結論から言うと、金利が大幅に上昇すると予想するのであれば今すぐにローンを組んだ方が良いと思う。もはや物件の価格はあまり問題ではない。ただ、物件が大幅に値下がりするリスクがあると感じるのであれば可能な限り値切った方が良いとは思う。

3150万円を借りて35年の固定金利で返済した場合を、元利均等払いで検証した。金利が1%上がるごとに総支払額が約700万円くらい増えていく。もし、1.35%で固定ローンだったら3954万円の支払額が、2%上昇した3.35%になっただけで、5353万円に跳ね上がる。もう多少の物件の値下がりを待つとか問題ではなくなる水準だ・・・。

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これを、利息だけの金額のグラフにしてみるとこうなる。これは元利均等払いなので、差が元金均等払いよりも大きくなることに注意が必要だが、これだけの差になる・・・。また注目なのが、1.35%と0.8%でもかなりの差額になることだ。

1.35%の場合の金利総額は、804万円だけど、0.8%だと462万円。物件価格が3000万円台であれば、この差額だけで価格が10%下がったのと同じことになる。もし物件価格を下げるのであれば利息を0.5%ポイントさげることに血道をあげた方が効果的かもしれない。あるいは、両方とも下げるかだ。

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さらに、月当たりの支払い額も比較する。月当たりにすると、現在賃貸に住んでいる場合は、家賃との比較がしやすくなるのではないだろうか。ここから現在の家賃の支払い総額とローンの総額との差額が手元に残り、さらに住宅ローン控除で所得税が減る分も想定で足し算して、どれくらいの資産が10年後や20年後に残るかを計算してみると良いのではないだろうか。

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ただし、購入する不動産の価値は減価するものとして計算しておいた方が良い。金利上昇局面では、必ず不動産価格は下落する。大幅な利回りの低下が見込まれるのであれば、今乗っているプレミアムの大半は剥落するだろう。そうしたバブル崩壊的な値崩れもあると思うので、それが起きても今の家賃との差額や生活面でのメリットや税金を減らせることで利益がプラスになると思えるのであれば良いのではと思った。

元金均等払いで支払った方が支払い利息は低くなるので、その検証は別途しようと思うけど、大体の感じがつかめれば良いので、まずは極端に差が出やすい元利均等払いでためしてみた。

エクセルで計算したい人は以下のサイトの方法を使うと元利均等も元金均等も両方試すことができる。

元金均等返済の金利分計算方法−ISPMT関数:Excel(エクセル)の関数・数式の使い方-財務

この住宅を買うバクチで勝つかどうかは、インフレ率の跳ね上がりがどこでどれくらい来ると考えるかによって結構違うはず。インフレ率が上がると、どこかで長期金利もそれなりに上げないといけなくなるので、不動産価格はインフレ率につれて上がるけど金利も上がるという局面があると思う。ただ収益性は悪くなるので不動産自体の投資価値は下がる。ということの綱引きの結果として、家賃も上昇し始める悪性インフレに発展すると、かなりこのバクチは価値が出てくる。

インフレ率の予測に使えるなと思うのは、個別の価格の推移だと思う。

不動産であれば、こういうのがあるけど。

神奈川県の土地価格相場・地価公示価格ランキング・坪単価

特に、注目しているのは引っ越し費用の価格推移。サカイ引越センターが決算説明会資料で、引っ越しの平均単価を出しているのでこれはかなり良い指標だなと思っています。最新のデータだと、平均単価:106,631円(前年同期⽐+10.7%)になっていて、局所的だけどインフレ率10.7%になっている。

http://www.hikkoshi-sakai.co.jp/ir/pdf/meeting/20171115.pdf

運輸業のインフレが全体に及ぼす影響はそんなに大きくないと思うけど、これがどういう経路をたどって全体に波及しそうかは以下の表を見ると何となくわかりそうな気がする。

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 データが示す日本の賃金動向、消費や物価への影響に注目 - Bloomberg

 非製造業で、かつ、その産業なしでは成立しないクリティカルパスっぽい仕事についてはもう人件費の上昇を価格に転嫁しても問題なくなってきている感じが次第に出てきそう。この傾向が、製造業にも波及しはじめるとかなりヤバイ感じのインフレ傾向になると思う。

賃金上昇は最初は一律ではなくてまばらに来ると思うので、全体としてのインフレ率だけ見ているとまだまだインフレは遠いような印象が終始していると思う。特に代替品があったりパスが複線化している産業ではそれが起きないので、気づくのが遅れる可能性があると思う。

導火線に火がついてしまうと、積みあがっている銀行預金中の固定で縛られている定期預金部分がすさまじい速度で毀損し始めるので、そのお金が途中解約されて移動し始めると思う。これが結構地味にヤバイ感じがしている。その行き先に偏りがあると、異常な価格が現出するので、シグナルが強いものとして認識されて、それきっかけでインフレ認識が伝播し始めると思う・・・。

「オープンダイアローグとは何か 」抜き書き

オープンダイアローグとは何か 」(斎藤環 著・訳)はいい。これは読んだ方がいいと思いました。

オープンダイアローグでは、医療者やカウンセラーは専門家ではあるものの診断したり、観察したりする存在ではなく、その場に巻き込まれた当事者として存在していて、つねに「健康寄り」の解釈と、クライアントに対する確実な応答を提供します。ミーティングは、必要であれば毎日、何日でも行われ、最後まで同じチームが担当します。

それによって、クライアントは混乱した状態から、確実に応答してもらえる心理的安全を得られ、チームによるリフレクティング(本人を前にした本人の噂話のような)から、次第に場によっており上げられた言葉で自身の状況を語れるようになっていきます。

これまでの精神医療のように家族をシステム的に理解し、システムに介入して病がある部分を除去したり修正するという考え方ではなく、専門家たちが当事者になることに大きな違いがあります。しかし、専門家としての役割を完全に放棄するのではなくて、「リフレクティング」や適切な「健康よりの解釈を含んだ質問」をする者として存在することが、高い治療効果をもたらしています。

依頼があると、電話を受けた人がリーダーとなり対応チームが組まれます。依頼から24時間以内に、本人と家族を交えた初回ミーティングが開かれます。なるべく薬は使わずに、本人抜きでは何も決めず、危機が解消するまでミーティングは続けられます。対象となるのは統合失調症をはじめとするあらゆる精神障害です。

そんな「オープンダイアログ」の流れは以下のようなものです。

実践のための12項目

1  ミーティングには2人以上のセラピストが参加する

2  家族とネットワークメンバー(クライアントに関わりのある人、知人や恋人)が参加する

3  開かれた質問をする(このミーティングに期待することはなんですか。などのこたえやすい質問。)

4  クライアントの発言に応える

5  今この瞬間を大切にする

6  複数の視点を引き出す

7  対話において関係性に注目する

8  問題発言や問題行動に淡々と対応しつつ、その意味には注意を払う

9  症状ではなく、クライアントの独自の言葉や物語を強調する

10  ミーティングにおいて専門家どうしの会話(リフレクティング)を用いる

11  透明性を保つ

12  不確実性への耐性

p47-48

対話では、言葉だけでなく非言語的なしぐさや表情や会話のリズムも受け止める。そのため、遠隔でのミーティングは想定されておらず基本的には対面で進めることが想定されています。

6は、オープンダイアローグの最重要要素のひとつ、「ポリフォニー」にかかわることです。ポリフォニーには二つの次元があります。外的ポリフォニーと内的ポリフォニーです。

外的ポリフォニーは、メンバーの多様な意見を多様なままで受け止めることです。多様な意見をまとめて合意に持ち込むのではなく、多様なままでポリフォニックな状態を維持すること。すべての発言に機会を与えること。

・・・一方、内的なポリフォニーは、個人の内面におけるポリフォニーです。内的なポリフォニーを喚起するために、セラピストはしばしば仮説的質問をします。これは、今その場にいない人の名をあげて「もしあの人がここにいたら、なんて言ったと思う?」などと質問をすることです。

7の関係性への注目については、簡単にいえば問題があってもすぐ個人の病理に結びつけずに、関係性のなかで考えるようにせよということです。ですから質問をする場合にも、家族関係やネットワーク内の関係性がはっきりするような質問を工夫することが望ましいのです。

8については、「正常化の言葉 normalizing discourse」がキーワードになります。クライアントの問題行動を、善悪や病理性という視点から考えるのではなく、そこにどんな意味があるのか、どういうコンテクストなら意味を与えられるのか、そうした点から考えるのです。

精神病理学でいうところの「発生的了解」に近い態度ですね。これに対し、症状を共感的に了解できない場合、病気と関連付けてそれを理解することを「説明」と言います。ならばオープンダイアローグでは、できるだけ症状を「説明」するのではなく「発生的了解」をしていこうという姿勢が基本にあるといえます。

・・・一般に精神科医は病理性や異常性には敏感で、正常寄り、健康寄りに理解することには消極的です・・・しかし私はむしろ、異常が認識されることで異常性が増幅される可能性のほうを危惧しています。職場などで「アスペ」のレッテルを貼られた人が、実際にコミュニケーションに支障をきたしたり挙動不審になってしまうことがよくありますが、これも同様の現象です。これは心理学でよく知られている「ラベリング効果」です。

ならば症状を「健康寄り」に見る態度が、同じラベリング効果によって、治療に寄与する可能性も十分に考えられます。病理性にのみ注目する立場が、実際に医原性の病理を作り出してしまうとしたら不幸なことです。私は多くの精神科医が、病理以上に患者の健康な部分に注目し、問題行動についても正常寄りにとらえる、つまりその意味をまず考えるという習慣を身につけるべきではないかと考えています。

p.49

オープンダイアローグの思想的な背景には、「言葉が現実をつくっている」というポストモダン以降の考え方があります。

「人間的表現から切り離された外側に、真理や現実は存在しません。治療に必要な条件は、新たな言葉や物語が日常の言説に導入されるように、社会ネットワーク上の対話の効果からもたらされるのです。この目標を達成するうえで、治療ミーティングにおける言語的実践にはふたつの目的があります。すなわち、メンバーを十分な期間参加させること(不確実性への耐性)と、ネットワークにおける重要な他者の導き(ポリフォニー)で、表現しえないことに声をもたらすこと(対話主義)です」

オープンダイアローグの背景には、「言葉」に対する強固な信頼があります。それい言い換えるなら「言葉こそが現実を構成している」という社会構成主義的な信念でもあります。だからこそ、「言葉の回復」こそが「現実の治癒」をもたらしうるのです。

p.51

また、オープンダイアローグを、別の側面から考えることもできます。「オートポイエーシス」のような考え方から眺めてみると、オープンダイアローグが目指しているものが分かりやすくなるかもしれません。この視点から見ると、人間は独立した存在ではないし、家族も独立したシステムではありえません。そこには独立した存在なくて、ただ対話を通じて対話を産出し続けるシステムの全体があるだけなのだ・・・と、理解することができます。

オートポイエーシスとは

(1)自律性・・・システムは自分に起こるどのような変化に対しても自分自身で対処します。

(2)個体性・・・システム自身が、みずからの構成要素を産出することによって自己同一性を維持します。

(3)境界の自己決定性・・・システムの作動そのものが、システムの内部と外部の境界を自分自身でダイナミックに決定し続けます。

(4)入力も出力もない・・・説明が難しいのですが、とりうえずここでは「オートポイエーシス・システムは閉鎖系である」と理解してください。

 

まだわかりにくいと思いますので、「結晶」を例にとって考えてみましょう。かつてのシステム論では、結晶をシステム、溶液をシステムの環境として、結晶を自己組織化するシステムととらえます。そのシステムは外部から観察できます。

オートポイエーシス理論では、結晶生成のプロセス(結晶と溶液の界面で生ずるような)をシステムの構成要素として、生成プロセスの集合をシステムであると考えます。この場合、結晶は生成プロセスから除去される廃棄物であるということになります。廃棄物とは、システムからの出力ではなく、作動がつづいていくかたわらに勝手に積みあがっていくイメージですね。

なかかな異様な理論ですが、これが現在の社会学や家族療法などに多大な影響を与えていることを考えるなら、ある程度理解しておいても損はないと思います。

対話が目的、治療は"廃棄物"

社会学者のニコラス・ルーマンは・・・社会システムを、その要素としてのコミュニケーションを再生産しつづけるシステムととらえます。簡単にいえば社会とは「人間」を環境として、コミュニケーションがコミュニケーションを自律的に再生産し続けるシステムということになります。先程の言い方でいえば、社会的なさまざまな事件や出来事は、「社会システムの廃棄物」ということになるでしょう。

ルーマンは人間の心的システムと社会システムとは「構造的にカップリング」していると述べました。これは、互いに互いを環境とし合うような関係で、決して融合することはないが、にもかかわらず一方が欠けると一方が消えてしまうような関係性を指しています。

この考え方を、オープンダイアローグに応用してみましょう。オープンダイアローグにとって、治療チームやネットワークのメンバーはシステムの要素ではありません。もちろん観察者でもありません。メンバーはオープンダイアローグ・システムの「環境」です。この環境のもとで、オープンダイアローグ・システムはダイアローグを再生産します。コミュニケーション一般ではなく、ダイアローグを、です。ダイアローグがダイアローグを再生産しつづけるような環境をつくることがメンバー全員に課せられた仕事です。

では「治療」は? そう、もうおわかりの通り、治療はオープンダイアローグというシステムの"廃棄物"として生成するのです。

オープンダイアローグをオートポイエーシスとしてとらえるメリットはいくつかあります。まず第一に「治療」そのものではなく「対話」をつないでいくことが目標である意味がはっきりします。メンバーは単に環境にすぎないと考えることで、システムそのものを「診断」したり「介入」したりするわけではないことの意義もはっきりします。「入力も出力もない」以上、そもそも作動に介入することは不可能なのですから。

p.56

実際の事例として、金物屋に勤めていた人が賃金を払われなくてボスとクリスマスのプレゼントを待っている家族との間で、進退きわまってしまい、偶然おきた停電もあいまって、「すべては自分に対する陰謀である」と認識するに至ってしまった経緯が対話によってときほぐされるプロセスが取り上げられます。

この事例では、たった一回のミーティングで症状は消えて、再発もしていないと言います。専門家チームは、妄想が始まったきっかけをゆっくりと聞きだし、そのときの本人の感情を尋ねます。そしてリフレクティングを通じて、彼自身の人となりや、ボスに対しても忖度してしまうような性格であるのではといったような解釈を本人の前ではなし、そして最後に、感想を本人に尋ねます。

つらい体験こそ宝である

経験的には、ミーティングにおいてともに切り抜けた体験が深刻なものであるほど、より望ましい結果が得られるようです。

・・・確実に言えることは、つらい感情を危険物扱いするのではなく、その場の自由な感情の流れのなかに解放したときにこそ、こわばって縮こまっていたモノローグがダイアローグへと変化を遂げる、ということです。

p.166-167 

 不確実性への耐性。

オープンダイアローグを支える理論には、「詩学 poetics」と「ミクロポリティクス micropolitics」がある。詩学には3つの原則があり、「不確実性への耐性」「対話主義」「社会ネットワークとポリフォニー」がある。

訳注・・・「あなたはまだ本当にお若い。すべての物事のはじまる以前にいらっしゃるのですから、私はできるだけあなたにお願いしておきたいのです、あなたの心の中の未解決のものすべてに対して忍耐を持たれることを。そうして問い自身を、例えば閉ざされた部屋のように、あるいは非常に未知な言語で書かれた書物のように、愛されることを。今すぐ答えを渡さないで下さい。あなたはまだそれを自ら生きておいでにならないのだから、今与えられることはないのです。すべてを生きるということこそ、しかし大切なことなのです。今あなたは"問いを生きて"下さい。そうすればおそらくあなたは次第に、それと気づくことなく、ある遥かな日に、答えの中へ生きて行かれることになりましょう。」ライナー・マリア・リルケ著、高安国世訳『若き詩人への手紙・若き女性への手紙』新潮文庫、30-31頁

p.95

 

統合失調症が減るということとインターネットとオープンダイアローグとうつが増えること

統合失調症がどうも減っていて、逆にうつが増えているらしいという話を前に斎藤環さんがtwitterでしていたという話を書いた。その時はどうも減っているらしいね、という感覚確認ぐらいだったけど、その背景として統合失調症の人にはオープンな対話が効果を発揮するということがあるのかもしれない。それは「オープンダイアローグ」という方法で、薬なしで対話をするだけで統合失調症がやわらいだり治ったりする、という技法があるらしい。

oror.hatenadiary.jp

ポリフォニーというのは、多声音楽のこと。多数の旋律が同時的な絡み合いが音楽となる多声音楽を意味する。
そのように、異質な声、異質な発言があること、それらが接続されることが原則であり、“対話の目的は、合意に至ることではない”。
診断もしないし、家族システムがおかしいと糾弾もしない。
対話ができるだけ続くように配慮する。
“やりとりが新たな現実を作り出すようなシステムを目指して対話が続けられる”。

「オープンダイアローグ」が興味深いのは、統合失調症の治療に限定されるものではなく、われわれの日常的な対話のヒントにもなりえるということだ。

www.excite.co.jp

そこでおこなわれるのは、まさに「開かれた対話」。輪になって座り、あらゆる発言が許容され、傾聴され、応答されることで会話をつなげていく。

すべての参加者は平等で、専門家が指示して患者が従う、といった上下関係はつくらない。

「対話こそが、迷宮から脱するための『アリアドネの糸』なのです」

「オープンダイアローグが目指すのは、精神病的な発話、幻聴や幻覚にとどまっている特異な体験に、共有可能な言語表現をもたらすことなのです」

「治療者は、問題についていかなる予断も持たずに、対話そのものが新たなアイディアや物語をもたらすことだけを願って対話に参加するのです」

オープンダイアローグの理論とその実践は、病気の治療法としてだけではなく、「言葉の力」に関心を持つすべての人に、何らかの刺激や示唆を与えてくれるはず。

斎藤氏が強調するのは、
「オープンダイアローグの理論は、ひとりのカリスマ的な理論家のナルシシズムに奉仕するためのものではない、ということです」。

つまり、関わってきた専門家たちが一緒に発展させてきたもので、セイックラ教授もあくまで自分はスポークスマンのひとりだという謙虚な立場を貫いていて、共著は出しても単著を出すことに対しては禁欲的なのだそう。

加えて、ケロプダス病院は、「スタッフがやめない職場」だそうです。医師も看護師も、全員が同じトレーニングを受けてセラピストになるので、妙な上下関係がなく、職種の壁もなく、スタッフひとりひとりの自立性が尊重されて、やりがいを感じられる職場なので、誰もやめたがらないんだとか。

こういうところにも、オープンダイアローグが成果を挙げている秘密がありそうです。

www.excite.co.jp

と、いうことらしい。たぶんだけど、斎藤環さん的には「オープンダイアローグ」的な効果はインターネットでも得られるんじゃないかという仮説を持っているのではと思いました。

だけど、一方ではうつが増えるということは、精神病的な発話、幻聴や幻覚にとどまっている特異な体験を持っていない人、どちらかというとすでに他者の意見や、他者への配慮を感性として豊かに持っている人は、大量の文字情報が流れ込んでくる環境は、うつを悪化させることにもなるのかもしれない。

暴力の人類史」を読んでいたら、人類の共感性を小説が高めていったという一節があって、とてもとても興味深かった。それまで他の人の人生なんて想像もできなかったのに、小説が出版技術の進化で誰でも手に入れられるものになった途端に、思考に革命が起きたという・・・。これまで誰も同情しなかった貧しい人とか、冤罪で刑務所に入れられた人とか、そういう境遇に激しく共感して泣いたりすることができるようになったらしい。

それで思い出したのが、暴力性が低い国は大体においてうつの人が多いという話。殺人発生率が高い国とうつ発症が多い国をプロットすると逆相関している、というのを前に何かの記事を引用して書いていた気がする・・・。

 

共感性とうつは多分だけど関係があって、前にも書いたけど、他人のことを過剰に想像しすぎるというところから、感情の暴走が始まってうつになるんじゃないかという仮説的なことを思っています。

 「「ずるい人」が周りからいなくなる本 

他人がずるいという感覚があるということは、何か自分が被害者意識を持つことだから、それって何なのかを今一度考えなおしてみるのが、この本です。「どうして自分がこんな目に!」と感じたときは、視点が偏っていたり、視野が狭まっている可能性があります。

なので、周りの人はうまくやっているのに、自分はできていないという感覚があったり、自分はしっかりやっているのにみんながルールを守れてないと思ったりすることが良くある、という場合は読んでみたら良いかもしれないです。ちょっと癖のある本なんで、あんまり真に受け過ぎない方が良いかも。悪循環を一回止めるための、風邪薬みたいな本です

ストレスを感じたときのおすすめの本 - ororの日記

ここら辺りは、思いつきでしかない。

それぞれがどう繋がっているのかは良くわからない。もうちょっと考えないと。